“テレワーク”というと在宅勤務をイメージする方もいらっしゃいます。事務だけでなく、建設業、電気工事、管工事、消防設備、清掃、ビルメンテナンスなどの現場で、テレワークで生産性を向上させることができます。テレワーク導入を支援する補助金、助成金もある現在、「ウチの会社は無理」という思いこみで損をしているかもしれません。建設業でのテレワーク事例やIT導入補助金など、テレワークのメリットを紹介します。
今さら聞けないテレワーク。実は建設業に向いている?
テレワークとは
さて、テレワークと言われてどんな仕事をイメージしますか?自宅で働く事務系の会社員を思い浮かべた方、1/3だけ正解です。実は、テレワーク=在宅勤務ではありません。
テレワークとは、厚生労働省の定義によると、「情報通信技術(ICT)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」です。つまり、会社から離れた場所で、ICTを活用して働くことすべてが「テレワーク」ということです。建設業の現場作業で、スマートフォンやタブレットを活用して仕事をすれば、テレワークなんです!
在宅勤務だけじゃない、テレワークの形態
テレワークは、大きく3つの形態に分けられます。建設業界では、コロナ以前から、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務が見えない形で普及していたと言えます。
在宅勤務 | 自宅で仕事をする、部分在宅勤務もあり |
モバイル勤務 | 外出や移動の途中で仕事をする |
サテライトオフィス勤務 | 本拠地以外の施設で仕事をする |
他業種より向いてる?!建設業のテレワークの事例とメリット
建設業では、会社としての制度やシステムがなくても、「普段の仕事が実はテレワークになっていた」という例が、実はすごく多いんです。現場作業の合間に、スマートフォンやタブレットで資料を確認したり、写真をクラウドで共有したりするのは珍しくありませんよね?これは、モバイル勤務やサテライトオフィス勤務にバッチリ該当しています。
他業種よりもテレワークを導入しやすいと言えるのに、「ウチでは無理」と思いこんでいる経営者も少なくありません。これは非常にもったいないことで、思いこみで損をしているかもしれません。
なぜなら、テレワークの活用による、働き方改革の対応や生産性向上、助成金・補助金の活用など、さまざまなメリットを逃している可能性があるからです。ここでは、建設業のテレワークの事例とメリットをご紹介します。
施工管理も現場から「事務所に帰って仕事」を最小限に!
FAXで届く施工図面のために事務所に戻るという話を聞きます。FAXのデータをメール転送するサービスを活用すれば、そのためだけに帰社する必要はなくなります。また、現場の隙間時間で施工管理に必要な情報を入手できるので、事務所に帰って仕事する回数を最小限にできます。FAXをスキャンしてメール添付でもOKですが、転送機能がついた複合機やFAX転送サービスもあります。
モバイルで勤怠管理、勤務時間を工事原価に反映
建設業でも2024年から残業時間の上限規制が適用され、勤怠管理の徹底が求められます。スマートフォン対応の勤怠管理ツールを使用して直行直帰を促進すれば、残業時間を減らせます。また、勤怠管理のデータを工事原価に反映して、原価管理に活用できます。
写真は“撮ってアップ” 現場で工事記録写真の作成まで
まず、デジタルカメラで撮影した工事記録写真のデータを現場でクラウドにアップすれば、データを持ち帰るために帰社する必要がなくなります。現場の隙間時間や移動中でも写真データの整理や分類もできます。工事記録写真を管理するツールを活用するとさらに便利です。
いつでもどこでも!遠隔地から技術指導
スマートフォンのビデオ通話で、離れた場所から技術指導を行うことができます。作業する手元を見ながら指示したり、手本を見せたりできるので、若手をサポートしながら、経験を積ませることができます。丁寧な教育は若手人材の定着にもつながります。
テレワークで助成金、補助金がもらえる!東京都のテレワーク促進助成金など
コロナ禍の影響で、県や市区町村など自治体の補助金、助成金も増えています。2020年度は、東京都、横浜市、埼玉県などでテレワーク関連の補助金がありました。自治体の補助金は採択率が高いと言われています。
そして、東京都の「テレワーク促進助成金」募集が開始されました!東京都の事業者の皆様は、ぜひご活用ください。
※詳細は、東京しごと財団のホームページ、募集要項などでご確認ください。
東京都 テレワーク促進助成金 | |
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対 象 | 都内に本社または事業所を置く事業者等 (1)常用する労働者が2人以上30人未満の企業 (2)常用する労働者が30人以上999人以下の企業 |
受給要件 | 以下の東京都が行う事業に参画していること ※その他の受給要件あり 「2020TDM推進プロジェクト」への参加 「テレワーク東京ルール実践企業宣言制度」への登録および実績報告時まで |
助成内容 | テレワーク機器・ソフト等の環境整備に係る経費 |
助成金額・助成率 | (1)常用する労働者が2人以上30人未満の企業 助成金額:最大150万円、助成率:3分の2 (2)常用する労働者が30人以上999人以下の企業 助成金額:最大250万円、助成率:2分の1 |
申請受付期間 | 令和3年5月10日~12月24日 |
受付先 | 公益財団法人 東京しごと財団 雇用環境整備課 |
IT導入補助金
IT導入補助金に、テレワークを対象とする低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)が設けられました。「業務の非対面化に資するITツール(非対面化ツール)」が補助対象となります。但し、パソコンやサーバなどの機器購入の費用は対象外です。
IT導入補助金の募集要項や申請の流れなどを弊社ホームページで解説しています。
通常枠 | 低感染リスクビジネス枠 | ||||
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種類 | A種型 | B種型 | C種型-1 | C種型-2 | D種型 |
ITツールの要件 | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するものであること | 【C型】通常枠の要件を前提として、複数のプロセス間で情報連携し複数プロセスの非対面化や業務の更なる効率化を可能とするものであること 【D型】通常枠の要件を前提として、テレワーク環境の整備に資するクラウド環境に対応し、複数プロセスの非対面化を可能とするものであること |
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補助金申請額 | 30万~150万円未満 | 150万~450万円以下 | 30万~300万円未満 | 300万~450万円以下 | 30万~150万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | 2/3以内 | |||
補助対象経費区分 | ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費等 | ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費、PC・タブレット等のハードウェアレンタル費 | |||
スケジュール | <1次> 公募締切: 交付決定:2021年6月15日(火) <2次>(予定) 公募締切:2021年7月30日(金)17時 交付決定:2021年8月31日(火) <3次>(予定) 公募締切:2021年9月中 交付決定:2021年10月中 |
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
2021年度に新設された助成金で、テレワークを活用して人材確保や雇用管理改善などの効果をあげた中小企業事業主が対象となります。
※詳細は、厚生労働省のホームページ、支給要領などでご確認ください。
人材確保等支援助成金(テレワークコース) | |
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助成対象 | 以下の取り組みに実施に要した費用 ・就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更 ・外部専門家によるコンサルティング ・テレワーク用通信機器の導入・運用 ・労務管理担当者に対する研修 ・労働者に対する研修 |
助成額 | 機器等導入助成:支給対象となる経費の30% 但し、100万円もしくはテレワーク実施対象労働者1人あたり20万円のいずれか低い方が上限 |
目標達成助成:支給対象となる経費の20%、生産性要件を満たす場合35% 但し、100万円もしくはテレワーク実施対象労働者1人あたり20万円のいずれか低い方が上限 |
「建設業にテレワークは無理」という思いこみで損をしないために
今回は、建設業におけるテレワーク事例、助成金・補助金についてご紹介しました。もちろん、電気工事、管工事、消防設備、清掃、ビルメンテナンスでもご活用いただけます。
SNSやフリーソフト、スマートフォンの機能などの活用で、テレワークをしているケースもあると思いますが、助成金、補助金を活用してITツールを導入すれば、さらに便利になるはずです!
テレワークは、コロナ対策だけでなく、コスト削減や生産性向上にもつながります。テレワーク導入のための助成金、補助金は今年限りとなる可能性があり、来年以降はすべて自社で負担しなければならなくなるかもしれません。このチャンスを逃さず、検討されてはいかがでしょうか。