6年目を迎えるIT導入補助金2022の概要が発表されました。注目したいのは新設枠のデジタル化基盤導入類型(インボイス枠)です。IT導入補助金2022の概要、初めてIT導入補助金の活用を検討している事業者様向けにITツールの選び方、申請のために必要なことなどを解説します。
目次
-6年目を迎えたIT導入補助金
-どこが変わった?IT導入補助金2022
-設備業で活用できるIT導入補助金2022の概要
-初めてのIT導入補助金はどこから準備すればいい?
補助対象となるITツールとは
申請にはIT導入支援事業者のサポートが必要
-IT導入補助金を活用してDX化の第一歩を!
6年目を迎えたIT導入補助金
IT導入補助金(正式名称:サービス等生産性向上IT導入支援事業)は、2016年(平成28年)の補正予算による事業として始まりました。中小企業の生産性向上を目的としたITツールの導入に関する費用が最大3/4まで補助されます。
働き方改革関連法による残業時間の上限規制、コロナ感染防止対策のテレワークなど、経済や社会のニーズにあわせて補助対象を追加・変更しながら、6年目となる2022年度(令和4年)を迎えました。そして、IT導入補助金2022では、2023年10月施行のインボイス制度への対応枠が盛り込まれています。
この背景には、皮肉にもコロナ禍が追い風となって加速化している、国や地方自治体の各種手続きのデジタル化に中小企業が乗り遅れないよう、その遅れが経済のデジタル化を停滞させないようにという意図があると考えられます。
もちろん、補助金がもらえるからと言って、自社に適さないシステムを購入する必要はありませんが、経済や社会の動きに乗り遅れることはデメリットやリスクにつながります。
また、根拠のない“IT不要論”が生産性向上を妨げ、業務のムリ・ムラ・ムダを生んでいるケースもあります。「中小企業だからシステムはいらない」のではなく、少数精鋭の中小企業だからこそ、デジタル化によって従業員の作業負荷を下げることで、業務の質の向上や人材の定着化につながる可能性があるのです。
<ここまでのポイント>
・IT導入補助金は経済や社会のニーズにあわせて補助対象が変化している。
・少数精鋭の中小企業はデジタル化で業務の質の向上や人材の定着化につながる可能性がある。
どこが変わった?IT導入補助金2022
2022年2月28日までに発表された概要では、IT導入補助金2022は、通常枠(A類型、B類型)、新設のデジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型の3種類の枠で支給される予定です。
特に注目したいのが、インボイス制度への対応を支援する目的で設けられたデジタル化基盤導入類型(以下、インボイス枠)です。これは2021年度の補正予算からの継続となっています。
会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトなど、インボイス制度に関連するソフトウェアを対象とし、それに伴うPCやサーバ、タブレット、レジなどのハードウェア購入費用も補助対象となります。クラウド利用料についても通常枠が最大1年分の補助であるの対し、インボイス枠では最大2年分まで補助されます。
デジタル化基盤導入類型はインボイスに関連するソフトウェアのみが対象となり、他プロセスと組み合せて導入する場合はA・B類型になります。デジタル化基盤導入類型の方が補助率は高くなっていますが、A・B類型でも、半分のコストで複数業務のデジタル化できるチャンスです!
もう一つの複数社連携IT導入類型、こちらも補正予算から継続されることになっています。地域のまちづくり、商業活性化、観光振興に取り組む事業者や団体が補助対象であり、設備業の会社として補助を受けることは難しいでしょう。
<ここまでのポイント>
・注目はインボイス制度への対応を補助対象とするデジタル化基盤導入類型(インボイス枠)。
・インボイス枠ではハードウェア購入費用とクラウド利用料最大2年分も補助対象。
設備業で活用できるIT導入補助金2022の概要
現在、公表されているIT導入補助金2022の概要から、通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入類型を紹介します。このほかに複数社連携IT導入類型がありますが、設備業の皆様には活用の機会が少ないため、省略させていただきます。尚、詳細については正式決定後に変更される可能性がありますので、ご注意ください。
●通常枠:業務全般のITツール導入を検討する場合
通常枠 | ||
---|---|---|
A類型 | B類型 | |
補助額 | 30~150万円未満 | 150~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | |
プロセス数 (対象となる業務工程、業務種別の数) | 1以上 | 4以上 |
ITツール要件 (目的) | プロセス数の要件を満たし、労働生産性の向上に資するITツール | |
賃上げ目標 | 加点 | 必須 |
補助対象 | ソフトウェア費、クラウド利用料(最大1年分補助)、導入関連費など |
●デジタル化基盤導入類型:会計・受発注・決済・EC業務のいずれかのITツール導入を検討する場合
種類 | デジタル化基盤導入類型 | |
---|---|---|
補助額 | ITツール | |
5万円~350万円 | ||
内、5万円~50万円以下部分 | 内、50万円超~350万円部分 | |
機能要件 ※1 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | |
賃上げ目標 | なし | |
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分補助)・導入関連費等 | |
ハードウェア購入費 | PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器 :補助率1/2以内、補助上限額10万円 | |
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
出典:IT導入補助金2022について(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会)
<ここまでのポイント>
・デジタル化基盤導入類型の補助対象は、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトの導入とそれに伴うハードウェア購入費。
・通常枠は業務のしばりがなく、インボイス対応を含む複合的な導入でも申請できる。
初めてのIT導入補助金はどこから準備すればいい?
初めてIT導入補助金を利用したいと思ったら、何から始めればよいでしょうか。
はじめに注意していただきたいのが、IT導入補助金を購入後の交付申請は受け付けていないという点です。購入する前にITツールを選び、IT導入支援事業者を通して購入しなければなりません。
IT導入補助金の交付申請のために知っておかなければいけない、ITツールとIT導入支援事業者の選び方について解説します。
補助対象となるITツールとは
導入したいツールが決まっているなら、そこから検討すればよいのですが、IT導入補助金の対象となるのは、IT導入支援事業者によって登録され、認定を受けたITツールに限られます。認定されていないITツールに対して補助金は交付されませんので、くれぐれもご注意ください。
まずは、IT導入補助金のポータルサイトで検索して確かめましょう。IT導入補助金2022についてこれからですが、過去のポータルサイトでは、ツール名やプロセス(業務)、どの枠に該当するかなどの詳細な検索ができるようになっています。
申請にはIT導入支援事業者のサポートが必要
IT導入支援事業者は、事務局に認定されたIT導入補助金を申請する企業を支援するパートナーです。
ITツールの提案から導入、事業計画策定の支援から各種申請等の手続きをサポートします。
2021年までに、IT導入支援事業者を装って架空の補助金申請を斡旋する詐欺被害が報告されています。これらのケースでは、実際にはIT導入支援事業者登録を受けていない事業者が「補助金が交付される」という虚偽の説明を行い、ソフトウェア類の購入費用や申請代行費用などを請求するそうです。
よく知らない会社からそうした提案を受けたときには、IT導入補助金のポータルサイトやコールセンターで、IT導入支援事業者登録の有無などを確認しましょう。
<ここまでのポイント>
・IT導入補助金は認定されたITツールだけが補助対象となる
・申請にはIT導入支援事業者の支援が必要
・IT導入支援事業者を装う詐欺被害もあるため、不審な業者には要注意。
IT導入補助金を活用してDX化の第一歩を
設備業に限らず、中小規模の経営者様の中には「DXなんて関係ない」「ウチには無理」と考えて、デジタル化を避けている方もいらっしゃいます。
しかし、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正により、発注元である大手企業から、デジタル対応を求められるようになっていく可能性は非常に高いです。場合によっては、受注減というリスクも懸念される課題です。
その他にも人手不足や働き方改革など、業務のデジタル化によって解決できる課題は少なくありません。もちろん、残業時間や経費の削減、生産性向上=収益アップというメリットがついてきます。
特に課税事業者の皆様にとってインボイス対応は必須であり、インボイス枠を活用してデジタル化を実現すれば一石二鳥と言えます。まずは、請求書発行業務のデジタル化から検討してみてはいかがでしょうか。