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  5. 【入札対策】低入札価格調査基準の計算式改定、入札の勝率を上げるポイント

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低入札価格調査基準が改定され、計算式の一般管理費等の料率が68%に引き上げられました。令和4年度の入札の実施方針とその対策を説明します。入札制度改正の概要、入札の勝率をあげるためのポイント、入札準備を効率化し、積算の精度を上げる方法をご紹介します。

目次
 低入札価格調査基準の計算式が改定される
 令和4年度入札・契約の実施方針と入札対策のポイント
 (1)令和4年度の取り組み
 (2)総合評価落札方式
 (3)2022年度の入札優遇制度
 (4)最低制限価格を左右する経費計算
 一般競争入札の勝率をあげるポイント
 落札できなければ時間のムダ?入札の精度と作業効率を向上!
 情報収集と精度の高い積算で入札に強い会社に

低入札価格調査基準の計算式が改定される

 令和4年4月1日以降の入札公告分から、低入札価格調査基準の計算式が改定されました。役員報酬や従業員の給料などを含む一般管理費等の係数が引き上げられ、直接工事費、共通仮設費、現場管理費は据え置かれます。最低賃金引上げの取り組みに伴う社会動向などを踏まえた改定です。

 改定前:一般管理費等×55%
         ↓
 改定後:一般管理費等×68%


事前公表される入札予定価格を参考すれば、厳密な積算なしでも入札額を決められます。入札予定価格を公表する案件に絞って応札する戦略もありますが、積算基準を理解し、適切な入札価格を算出ができれば受注機会を増やせます。

<ここまでのポイント>
・低入札価格調査基準の計算式の一般管理費等が55%から68%に引き上げ。
・積算基準の知識があれば受注のチャンスを拡大できる。

令和4年度入札・契約の実施方針と入札対策のポイント

 低入札価格調査基準の改定を含む令和4年の取り組みは、令和元年10月の公共工事の入札及び契約の適正化の促進を受け、継続的に実施されます。

参考:公共工事の入札及び契約の適正化の推進について(国土交通省)

(1)令和4年度の取り組み

 各省庁、地方公共団体ごとに差異はありますが、適正化の方針は同じです。国土交通省関東地方整備局では4点が掲げられています。

①透明性の確保
災害時などを除き指名競争入札を廃止、すべての工事で総合評価落札方式を実施。不正が発生しにくい制度を適用。

・予定価格作成時期の後倒し
・入札書と技術提案書を同時に提出する
・総合評価落札方式の積算と技術審査・評価の業務を分離する
・技術提案書の業者名マスキングを徹底する

出典:令和4年度 入札・契約、総合評価の実施方針(案)[工事](国土交通省関東地方整備局)

②効率的な事務手続き
総合評価落札方式は、施工能力を評価する「施工能力評価型」と技術提案を評価する「技術提案評価型」の二区分を併用。

③企業の技術力が十分発揮できる競争環境の確保
地域要件や評価配点を明確化し、ダンピング受注対策、不調・不落対策、担い手育成・確保、働き方改革、品質確保、生産性向上、技術力の向上の各施策に応じて、入札・契約および総合評価を実施。

④維持管理面を重視した工事の品質確保
維持工事等の複数年契約、維持管理付き工事発注方式、特定事業者と特命随意契約を実施する方式、地域維持型JVを活用。

(2)総合評価落札方式

総合評価落札方式は、公共工事の品質低下や環境破壊を防止する目的で導入された、価格と技術力などの要素を総合的に評価する落札方式です。技術力の評価が高ければ、より入札価格が低い業者があっても落札できます。

出典:公共工事発注にあたっての総合評価落札方式活用ガイド(国土交通省国土技術政策総合研究所)

除算方式評価値=技術評価点÷入札価格
入札価格以外の要素を、仕様上の要求要件に関する「基礎点もしくは標準点」と付加価値にあたる「加算点」を合計した「技術評価点」として数値化します。技術評価点を入札価格で割った「評価値」が大きいほど高い評価になります。
加算方式評価値=技術評価点+価格評価点
「技術評価点」と入札価格を数値化した「価格評価点」の合計が評価値となります。価格評価点は入札価格が低いほど高くなります。国土交通省にて試験採用中。

(3)2022年度の入札優遇制度

2022年度は、賃上げに関する入札の優遇措置が設けられています。基準を満たした事業者には、総合評価落札方式の加算点が5%上乗せされます。優遇には会社と労働組合の代表が署名した書面の提出が必要で、税務申告時の賃上げ率が基準に達しなかった場合は、次の1年間の入札で加算分よりも多く減点されるペナルティがあります。

<優遇措置の基準>
  大企業:全従業員の平均給与の3%以上
中小企業:給与総額の1.5%以上

 ※賃上げ率の算定対象は基本給のベースアップと賞与

(4)最低制限価格を左右する経費計算

国および地方自治体の入札で適用される低入札価格調査基準のほか、地方自治法にもとづく最低制限価格制度があります。最低制限価格の料率は自治体ごとに設定されますが、低入札価格調査基準の率が流用されることが多いです。

最低限度価格の算定は、積算見積で算出した金額を100%(以下、積算金額)とし、それに項目ごとに定められた率を乗じます。今回の制度改正ではこの「一般管理費」の部分が引き上げられました。

   直截工事費 × 97%
   共通仮設費 × 90%
   現場管理費 × 90%
+  一般管理費 × 68%
——————————————
   上記の合計:最低制限価格


積算金額に「その他工事」「リース料」「発生材処分費」「有価物売却費」などの変動要素が含まれる場合、最低制限価格の計算式の元となる金額が変わるため、計算結果も変わってきます。この結果が最低制限価格に強く影響します。落札に関わる場合には注意が必要で、逆の見方をすればチャンスの物件であるともいえます。

<ここまでのポイント>
・総合評価落札方式は、価格と技術力などの要素を数値化して総合的に評価する。
・ダンピング受注対策として低入札価格調査基準を改定。
・正確に最低制限価格を算出するポイントは変動要素。

一般競争入札の勝率を上げる対策

 参加資格があれば自由に参加できる一般競争入札では、好条件の案件ほど競争が激しくなります。受注を増やすには、入札情報を把握して選択肢を増やすこと。そのための情報収集が重要です。選択肢が多いほど、収益が高い案件、競合が少ない案件を選びやすくなります。たとえば、都道府県より競合が少ない市区町村があるなど、倍率にはバラツキがあります。

入札公告は官公庁や自治体のホームページのほか、入札情報サイトなどで確認できますが、担当部署に営業をかけると、公告前に情報をもらえる場合があります。もちろん、不正な内部情報は出てきませんが、いつ、どんな案件があるのか程度の話は聞ける場合があります。

入札価格の判断材料として、発注者や競合、過去の入札結果などの情報も貴重です。落札価格の相場観や発注内容の傾向を推測できる場合もあります。過去に類似物件を落札した業者は、次の物件で近い金額を入れるかもしれません。

そして、総合評価落札方式でも入札価格は低い方が有利です。利益を確保しつつ、競合他社に勝てる入札価格を出すには正確な積算が大前提です。

<ここまでのポイント>
・入札の勝率を上げるには、過去の入札結果や競合先、発注窓口などの情報収集は有効。
・勝てる入札価格の算出は正確な積算から。

落札できなければ時間のムダ?入札の精度と作業効率を向上!

落札できないかもしれない入札にあまり手間をかけたくないのは当然です。応札した実績が残るのでムダではありませんが、受注はゼロです。しかし、アバウトな積算では赤字工事のリスクがあり、思いきった入札額を出しづらくなります。

積算や原価管理、経費計算を自動集計できるITツールを活用すれば、積算・見積から入札価格を決定するまでの労力や時間を大幅に短縮できます。

2022年5月リリースの公共工事経費計算ツール「Smart-S」は、営繕および住宅の経費計算を実行するツールです。工事積算見積システム「本丸EX」の画面から起動でき、実行予算での利益把握や受注後の原価管理に繋げる事もできます。

Smart-Sは公共建築工事共通費積算基準、公共住宅工事共通費積算基準にもとづき、クリックするだけで経費を自動計算します。工事種別、条件、各項目の金額を入力して計算する順算と予定価格から逆算する機能があり、処分費、その他工事、特殊工事などの変動要素の経費計算にも対応しています。

入札金額の精度と作業効率をあげられます。入札に参加しやすく、かつ攻めた入札価格を出せるようになります。

<ここまでのポイント>
・ITツールの活用で、積算・見積から入札価格を決めるまでの労力や時間を大幅に短縮。
・Smart-Sで入札価格の精度と作業効率を向上し、入札の勝率アップ。

情報収集と精度の高い積算で入札に強い会社に

入札価格とあわせて会社の技術力や経営状態が評価される総合評価落札方式が主流になりつつあります。今のところ一般競争入札と併用されていますが、今後の入札制度改正でどのように変わっていくか気になるところですね。

言うまでもないことですが、入札ではより低い金額を入れた会社が落札します。だからと言って、低すぎる札を入れて赤字工事になっては本末転倒です。利益を出せる最下限の金額を算出するには、精度の高い積算と入札前の利益把握が大前提になります。

公共工事経費計算ツールSmart-P

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