1. HOME
  2. ブログ
  3. 利益管理・売上拡大
  4. 【建設業の原価管理】工事原価を簡単に管理する方法

BLOG

ブログ

 建設業の経理についてはアバウトな印象を持たれがちです。実際、工事ごとの原価管理を大まかに済ませている会社もあります。その理由には工事原価管理の複雑さ、変動要素の多さがあります。
 適切な工事原価管理でメリットがあることを漠然と理解していても、管理を行える人材が少ないために、労力や時間を惜しんで見送ってしまう傾向もみられます。工事原価管理のメリットや簡単に管理する方法を解説します。

目次
-工事原価を管理できない理由
(1)原価計算の複雑さ
(2)変動要素の多さ
(3)管理業務の労力
-工事原価を管理するメリット
 -工事原価管理のポイント
(1)現場ごとに経費を分解する
(2)配賦計算(人件費、経費)
(3)配賦計算(共通経費)
-原価管理システムで何ができる?
-原価管理で生産性向上と経営基盤の強化

工事原価を管理できない理由

他の業種と同じように、建設業でも工事原価を工事ごとに管理するのが原則ですが、実際には徹底されていない会社もあります。工事原価の管理が難しい理由について考えてみましょう。

(1)原価計算の複雑さ

建設業の原価計算は複雑です。設備業の経営者には他業種を経験していない方も多いですが、他業種の経理経験者でも慣れるまでには時間がかかり、税理士にも建設業の経理がわからない人は多いです。

労務費と外注費
 建設業を支えている一人親方などへの業務委託費は、臨時雇用者の賃金と同じ外注労務費として扱われ、外注費ではなく労務費として仕訳されます。発注先が個人ではなく法人の場合は、一般的には外注費として扱われますが、実質的には労務費と同等の場合もあり、判断が難しい場合があります。外注費の比率が高くなると、自社でとりしきった工事が少ないと判断される可能性があります。

工事進行基準
 材料費、労務費、外注費などの経費を先行して計上する工事進行基準により、会計処理が複雑になっています。そもそも工事進行基準は適正な原価管理を行うための会計処理ですから、工事進行基準の処理を行いながら、工事ごとの原価計算を省略するのでは労力を無駄にしているとも考えられます。
共通費
 現場ごとに工事費に含まれる共通費等には、工事費を構成するうえで原価に含むものと含まないものが混在します。一人の従業員の人件費でも、業務によって工事原価に算入するかどうかを判断しなければなりません。

(2)変動要素の多さ

不測の事態で材料費や労務費が増加する可能性があります。材料や外注費などの価格など、原価が変動する要素は数多く存在します。その変化を把握するためには、予算と実績の対比が必要になってきます。

(3)管理にかかる労力

複雑な仕訳と多くの変動要素に対応するには、原価の集計と対策をリアルタイムに行わなければなりません。現場ごとの個別原価計算では現場担当者の判断が求められます。しかし、集計すべき項目も多く、かなりの作業負担となってしまうのも事実です。

<ここまでのポイント>
・複雑な原価計算手法や変動要素の多さで原価管理の作業負荷が高い。
・経営者、現場担当者の負担となり、徹底できない会社も多い。

工事原価を管理するメリット

工事原価の管理によって現場ごとのコストを正確に把握でき、利益を確保しやすくなります。見積内容から実行予算を立てて管理すれば、さらに精度は高まります。もちろん、必要な経費や材料費を削減することはできませんが、経費節減の工夫や追加工事の交渉など対策をとれる可能性があります。

現場ごとの原価管理の精度があがれば、損益分岐点が明確になります。年間の業績が黒字化するまでにどれだけの利益が必要か数字として把握できれば、見積や値決めの際に利益率と利益額のどちらを優先すべきかの判断基準を持つこともできます。入出金予定に関する正確な情報があれば、資金繰りの経営判断もしやすくなります。

関連記事:実行予算とは、組み方と活用方法、工事管理で注意すべきポイント

<ここまでのポイント>
・進行中の現場のコストが明確になると、利益確保のアクションがとれる。
・適正な原価管理で損益分岐点が明確になり、資金繰りや経営判断がしやすい。

工事原価管理のポイント

(1)現場ごとに経費を分解する

材料費、外注費、外注労務費、水道光熱費、通信費、飲食代、事務用品費など、すべての経費を工事原価(現場で直接使用した経費)と販売管理費(工事以外で使用した経費)に分解して仕訳します。請求書の中には、複数の現場や使用目的が異なるものが混在する場合があります。一括して請求される場合は、納品書や請求明細を確認しながら、使用目的や現場ごとに分解していきます。

現場を特定できない共通経費は、現場数で均等配分する、工事規模によって按分するなどの方法で割り振ると精度が高くなります。工事原価と販売管理費を厳密に分解していくのはかなり大変な作業です。仕入れ先に協力してもらい、請求書に現場ごとの集計を記載してもらうと、現場ごとの仕訳がスムーズになります。そのために、すべての現場に工事番号を割り当てて管理することをお奨めします。

<効率化のポイント>
①すべての現場で工事台帳を作成し、工事番号を割り当てる
②仕入れ先への発注書に工事番号を明記する
③請求書に工事番号を記載してもらう

(2)配賦計算(人件費、経費)

社員の人件費(労務費)、法定福利費等の経費を、現場ごとの作業日数、時間数から算出し、割り振ります。材料費や外注費などの原価が発生しない工事では、人件費や経費を振り分けないと工事原価は0円になります。
社員個々の実日給・実時給を乗じて算出する方法のほか、市場単価、自社で設定した労務単価を用いる方法があります。

社員個々の実労務単価原価としての精度は高いが算出に手間がかかる
市場単価算出の手間はかからないが、実単価との差が大きいと精度が低くなる
自社の労務単価期首に労務単価を設定すれば、最小限の手間で一定の精度を確保できる

(3)配賦計算(特定の現場に紐づかない経費)

 倉庫整理の人件費、機材・工具のメンテンス費用、自社所有重機の減価償却費など、工事に関するものではあっても、特定の現場に紐づけられない経費があります。これらも工事原価として、一般管理費もしくは共通経費などの科目で各現場に按分します。一定の料率で計上するか、工事受注高、各現場の直接経費の合計額などの割合で按分する方法があります。

<ここまでのポイント>
・すべての経費を工事と工事以外の原価に分ける
・共通経費は現場ごとに按分するか一般管理費として定率計上しても可。

原価管理システムで何ができる?

原価管理システムがよくわからない場合は、システム上の工事台帳をイメージしてください。
【二の丸EXv2】では、システム上の工事台帳に実績情報を材料費・外注費・労務費・経費に仕訳して入力すると、現場ごとの原価が集計されます。

工事原価管理の真価は、現場ごとの利益を数値として共有することです。現場代理人の社員と共有することで、原価意識と当事者意識を育てられます。現場ごとの利益を人事評価に取り入れている会社もあります。

また、他の業務とのデータ連携もできます。積算見積や会計ソフトとの重複入力がなくなりますので、作業工数や転記・入力ミスが減り、業務を効率化できます。勤怠管理ソフトとの連携では、現場ごとの労務を勤怠データから取り込むことができます。請求管理も現場ごとに行えるので請求もれを容易にチェックでき、入金管理まで一つのシステムで行うことができます。

<二の丸EXv2でできること>
・仕入れ先から受け取った請求情報のテキストデータを取込み、入力作業を削減
・請求情報に工事番号が記載されていれば、自動的に現場ごとに振り分けられる
・事前に組んでおいた実行予算との予実対比を“見える化”できる
・インボイス制度対応① セットされた書式で適格請求書を発行、自社書式の作成も
・インボイス制度対応② 得意先マスタで適格請求書発行事業者を管理、消費税控除の計算を簡略化

参考:設備業向け工事原価管理システム【二の丸EXv2】

<ここまでのポイント>
・二の丸EXv2はシステム化された工事台帳のイメージ。初心者にも直観的に把握できる。
・インボイスに対応できる
・見積システム・会計システムとの連携で、二重入力などの手間とミスを大幅に削減できる。

原価管理で生産性向上と経営基盤の強化

中小規模の設備業者には管理業務をこなせる人手が少ない会社も多く、社長ひとりに管理業務、営業、積算見積、現場管理などのさまざまな業務が集中しがちです。そして、工事の品質や工期厳守など、現場をまわすことに注力するあまり、工事原価管理の優先度が下がってしまう傾向があります。

つまり、誠実に仕事をしているのに利益を確保できない状況を、自ら作り出してしまっているのです。
逆に考えれば、少ない労力で効率よく原価管理ができるようになれば利益を把握しやすくなり、受注件数を増やさなくても、より多くの収益をあげられる可能性があります。原価管理システムのデータは、他業務にも流用できるので、管理業務全体の効率化も期待できます。

原価管理システムの導入にはIT導入補助金を活用できます。また、原価管理に関するセミナーや事例紹介などの動画もあります。まずは詳しく知るところから始めてみてはいかがでしょうか。

拾い・積算見積・原価管理 業務改善Webセミナー

関連記事