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  4. 電子インボイス制度で消費税免税事業者の仕事が減る?中小企業、建設業の影響は?

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2023年10月のインボイス制度導入に伴い、消費税免税事業者からの仕入税額控除が段階的に減額され、2029年10月に完全廃止されます。これにより発注側の課税事業者の税金負担が増加するため、建設業ではひとり親方などの免税事業者への発注が激減すると言われています。必ず知っておくべき、インボイス制度の概要と、発注減を避けて事業を継続するための対策を紹介します。

2023年10月1日施行!インボイス制度(適格請求書保存方式)とは

建設業界ではあまり馴染みがありませんが、インボイスとは請求書をさす英語です。外資系企業や海外取引のある会社ではよく使われています。
最近、新聞の経済面やネットで話題になっているインボイスは、2023年10月1日に施行される「インボイス制度」をさしています。インボイス制度は、適用税率や消費税額など必要事項を記載する「適格請求書保存方式」を導入するための制度です。インボイス制度の対象となる適格請求書発行事業者は、以下の項目を記載する適格請求書を作成・発行し、受領した事業者は、すべての適格請求書を7年間保管することが義務づけられます。

<適格請求書の要件>
①適格請求書発行事業者の氏名または名称、登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額など
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

「適格請求書発行事業者」として登録されると「仕入税額控除方式」が適用されるというメリットがあります。「仕入税額控除方式」と言っても、すぐにはピンとこない方も多いと思いますが、課税売上にかかる消費税から、課税仕入れに関する消費税が控除される、ということです。
そのため、売上1000万円を超える消費税課税事業者が対象となります。
「売上1000万円以下だからウチは関係ない」と油断していると、会社存続の危機に陥ってしまうかもしれません。
この「仕入税額控除方式」は、消費税を納付していない個人事業主や売上1000万円以下の会社にとって、大きなダメージを与える可能性があると言われています。

インボイス制度で消費税の負担が増える?

ご存じの通り、消費税は消費者が負担する「税金」を、事業者が「預り税」として受け取り、納付する税です。
そのため、材料の購入や外注先への支払いで発生する消費税を、売上額の消費税から差し引くことが認められています。これが「仕入税額控除」という制度です。
従来の仕入税額控除では、仕入先が課税事業者であるかどうかを問わず、請求書に消費税として記載された分はすべて控除対象にすることができました。しかし、インボイス制度の導入と同時に、下表のスケジュールで、仕入税額控除は段階的に減額され、完全に廃止されることが決まっています。
そして、2029年10月1日以降は、インボイス方式で請求された消費税だけが、仕入税額控除の適用対象となります。つまり、適格請求書発行事業者でないと、仕入税額控除の対象にはならないということです。
仕入税額控除が無くなる分、課税事業者の消費税の負担が増大します。その結果、仕入税額控除の適用対象となる仕入先・外注先への発注が優先され、ひとり親方などの消費税免税事業者への発注が激減すると言われています。

対象期間 仕入税額から控除できる範囲
2023年9月30日まで 仕入税額控除の額 × 100%
2023年10月1日~2026年9月30日 仕入税額控除の額 × 80%
2026年10月1日~2029年9月30日 仕入税額控除の額 × 50%
2029年10月1日以降 完全廃止 → インボイス方式のみ適用対象

インボイス制度による発注減を避ける方法

消費税対策による発注の減少を避ける方法があります。それは、適格請求書発行事業者となることです。適格請求書発行事業者となり、インボイス方式の請求書を発行することができれば、仕入税額控除の対象になり、これまで通りの取引関係が続けられます。
適格請求書発行事業者として登録できるのは、課税事業者だけです。2023年10月1日の時点で、適格請求書発行事業者となりたい事業者は、2023年3月31日までに納税地の管轄税務署に登録する必要があります。
また、免税事業者が適格請求書発行事業者としての登録を受けるためには、課税事業者となる必要があります。「消費税課税事業者選択届出書」を納税地の管轄税務署に提出すれば、課税事業者となることができます。インボイス制度の初年度である2023年10月1日を含む課税期間中に登録される場合は、例外として登録を受けた日から課税事業者となることが認められています。
免税事業者にとっては、消費税の負担だけでなく、消費税の申告納税の手続き、インボイス制度の要件を満たす複雑なインボイス作成など、事務処理の負担も大きくなります。
また、インボイス制度では、不正な処理に対する厳罰があります。
一つは適格請求書発行事業者でない会社が立場を偽るケースです。適格請求書発行事業者以外の者が、適格請求書等と誤認される書類を交付した場合です。軽い気持ちでそれっぽい請求書を発行してしまうと犯罪になりますので、注意しましょう。
もう一つは、適格請求書発行事業者が適格請求書等に虚偽の内容を記載した場合です。
いずれも、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の罰則が設けられています。

電子インボイスって何?導入のメリット

電子インボイスとは、適格請求書の記載内容を電磁的記録で提供したものです。国のDX、グローバル化戦略を受け、国際的な標準規格「Peppol (ペポル)」に準拠しています。
軽減税率の対象が少ない建設業は、製造業、外食業などと比較すると、請求書の記載内容はシンプルにすむ傾向があります。それでも、インボイス方式の要件を満たす適格請求書は、従来の請求書作成と比較するとかなり複雑になります。
請求書発行の機能を実装したソフトウェアの多くが、適格請求書への対応を進めています。
ソフトウェアの活用により、データの照合や複雑な税率計算が自動的に処理され、作業負担は大幅に軽減されます。また、ペーパーレスによって、印刷、捺印、発送などの作業と郵送のコストが削減できるというメリットもあります。郵送のタイムラグがなくなるため、締日の期限も緩やかになります。
石田データサービスの工事原価管理システム「⼆の丸EX」では、工事の見積情報と連携して、原価管理と請求書発行、入金管理などを重複入力なしで処理できます。EXCELなどを使用した従来の請求書発行と比較しても、より作業負担を削減して適格請求書を発行できます。 また、発注者の立場で、適格請求書を受領した場合は、記載の税率にあわせて原価を登録できますので、税率ごとの集計が簡単にできます。
「⼆の丸EX」での適格請求書発行では、帳票項目を任意で設定でき、設定した内容が自動的に反映されますので、税率ごとの集計や項目の並べ替えを行う必要はありません。省作業により、ケアレスミスも防止できます。

◇「⼆の丸EX」の適格請求書発行の機能◇ ①適格請求発行事業者名(社名、氏名)と登録番号を記載すると、自動的に表示される。
②軽減税率、非課税を表す記号を設定すると、対象科目に自動的に表示される。
③税率ごとの合計金額、消費税額が自動集計され、請求書に反映される。

インボイス制度で消費税を納付しない事業者の仕事がなくなる?!

インボイス制度は請求書の様式や保存に関する制度ですが、免税事業者からの仕入税額控除の減額という形で、免税事業者との取引によって、課税事業者の税金負担が増えることになります。その結果、発注先を選定する際に、消費税課税事業者である「適格請求書発行事業者」が優先されるようになると予想されます。ひとり親方などの小規模の免税事業者は、売上1000万円以下であっても、受注を維持するために適格請求書発行事業者となったほうがよい場合があります。


工事原価管理システム「⼆の丸EX」

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