一般競争入札が主流となった公共工事は、受注実績がない業者にも門戸を開かれています。しかし、短期間で複雑な積算を行い、落札できそうな入札価格を算出する作業は、積算できる人材が少ない中小企業ではかなりの負担です。何度やっても落札できなかったり、何とか落札しても利益が少なかったりすると、くたびれ損ですよね。効率よく、受注確度を高めるための入札のポイントを解説します。
目次
-入札件数は増加傾向、物件を選ぶポイントが重要?
-予定価格を事前公表する物件が狙いめ!
-予定価格の事前公表は減っていく?
-最短ルートで適正な入札価格を算出する方法
-営業なしで受注できるチャンスを活かそう!
入札件数は増加傾向、物件を選ぶポイントが重要?
平成12年の入札契約適正化法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)により、公共工事の入札は指名競争入札から一般競争入札に移行、実績のない事業者でも参加できる入札の件数は増加しました。公共工事の予算増に連動して、入札で受注できる機会は増えます。
しかし、一般競争入札は要件を満たせば誰でも参加できる分、競合が多くなり、手間暇をかけて積算しても落札できないケースも増えます。どんなに頑張って見積しても受注できなければ、時間と労力が無駄になってしまいます。少しでも落札しやすい入札を選べるとよいですね。
落札しやすい、すなわち受注確度が高いのは、たとえば競合が少ない、予定価格などの発注者の傾向が把握しやすいなどの自社にとって有利なポイントがある案件です。自治体によっては地元の中小企業が有利になる制度などもあります。公表された入札情報からこうしたポイントを見極めるのも、入札の確度を高める方法です。
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<ここまでのポイント>
・公共工事の実績がなくても参加できる入札は増加。
・入札情報から自社にとって有利な入札を見極めて参加しよう。
予定価格を事前公表する物件が狙いめ!
ご存じの方も多いと思いますが、入札には、発注者側が適正と考える価格である「予定価格」が定められています。予定価格は発注者による積算を元に設定された金額であり、入札価格が予定価格を上回ったときは不調となります。
過去に、公共工事の入札で不調が頻発した時期がありました。入札を行う時期に資材価格や労務費が急激に値上がりし、入札価格と予定価格に大きなギャップが生じたのです。その結果、何度も入札を繰り返したり、最悪のケースでは着工が大幅に遅れたりもしました。苦肉の策として、予定価格を事前公表するようになり、それが一部の自治体で続いています。令和2年10月時点では、市区町村の約4割が事前公表を行っていました。
予定価格が事前公表される場合は、それらを基準にできるので、直接工事費の積算をしなくても入札価格を決められます。忙しい業務の合間でも、少ない工数で受注できるチャンスでもあります。入札情報をチェックして、事前公表の物件を優先して応札する会社もあるようです。
<ここまでのポイント>
・予定価格が事前公表される入札物件がある。
・直接工事費の積算をしなくても入札価格を決められる。
予定価格の事前公表は減っていく?
総務省が予定価格の事前公表の是非を検討した際、公表するメリットとして、職員から予定価格を聞きだそうとする動きがなくなることを挙げています。しかし、メリットとしてはかなり薄弱と言えます。それに対して、予定価格を事前公表することで落札価格が高止まりする、入札談合が容易になるなど、より多くのデメリットが指摘されています。では、予定価格の事前公表は廃止されるのでしょうか?
国土交通省の入札・契約の適正化方針では、自治体における事前公表の廃止を努力義務事項、総務省ではトラブルがあったときには廃止するよう呼びかけています。つまり、2022年時点では国のスタンスは努力義務事項に留まっており、多くの自治体で予定価格の事前公表が行われています。
併せて落札結果の集計をとることをお勧めします。まずは、正確な結果を把握することが重要です。ほとんどの場合、入札結果が公表されていますが、正しい最低制限価格の金額と何故そうなったのかという事を把握しておくことです。その情報の収集・集積が次の入札に繋がります。
<ここまでのポイント>
・予定価格の事前公表の廃止は努力義務、しばらくは続けられる見込み。
・事後公表の最低制限価格を集計すると、発注者の積算のポイントを分析できる。
最短ルートで適正な入札価格を算出する方法
事前公表の入札では、予定価格が上限、最低制限価格が下限であり、その範囲内の入札価格でないと落札できません。最低制限価格の算定基準(計算式)が公表されていれば、大まかな内訳を算出できます。算出のポイントになるのが経費計算です。
- ①最低制限価格の算定式を把握する
国土交通省は、令和4年4月に発表した最低制限価格の算定式の改正を発表しました。ほとんどの自治体が国土交通省に準拠していますが、算定式の係数や計算結果の丸め方の違いなどで差異が生じます。わずかな違いに思えますが、0.01%の違いでも落札できなくなってしまいます。自治体ごとの算定基準(算定式、端数処理など)を正しく把握することが重要です。 - ②経費の変動要素
予定価格が同額でも、直接工事費に含まれる「発生材処分費」「有価物売却費(スクラップ費)」「その他工事」などの変動要素の金額によって、最低制限価格は変わります。
さらに、「管理事務所の有無」「前払金支出割合」「契約保証費」「工期(月計上)」「週休二日制」などの計算条件も大切な要素です。営繕工事の場合はこれらが明示されないケースが多く、判断できるだけの予備知識が必要です。 - ②変動要素や計算条件を網羅して経費計算を行う
すべての変動要素や計算条件を網羅すると、非常に複雑な計算になります。Excelなどの表計算ソフトでも可能ですが、経費計算の知識と高度なExcelのスキルを兼ね備えなければなりません。入札後に算定式を調整するのは大変な労力ですし、計算ミスをチェックするのも至難の業です。
公共工事経費計算ツールで「Smart-S」「Smart-P」がリリースされました。
「Smartシリーズ」は、自治体ごとの算定基準の登録やシミュレーションを簡単に行えます。必要な選択条件や変動要素入力枠がすべて用意されていますので、勉強しながら経費計算を行うことができます。 - ③予定価格と最低制限価格を順算・逆算
「Smartシリーズ」の順算・逆算の機能で、予定価格からの最低制限価格をシミュレーションできます。たとえば、予定価格から最低制限価格を算出する場合は、逆算入力で、必要な変動要素の金額を正確に入力するだけで計算が完了します。必要なのは正確な数値を入力すること!複雑な計算は「Smartシリーズ」にお任せです。
<ここまでのポイント>
・最低制限価格算出のポイントは経費計算。
・すべての変動要素や計算条件に対応した計算は複雑で難しい。
・Excelでは高度な知識とスキルが必要、経費計算ツール活用がお奨め!
営業なしで受注できるチャンスを活かそう!
公共工事の入札は、営業活動なしでも受注できます。民間工事と受注先を分散できれば、リスクヘッジになります。公共工事には、手形決済がないのでキャッシュフローが改善する、社会的信用が向上するなどのメリットがあります。
入札参加資格は手続きだけで得られますが、落札できるかどうかは別問題です。当然、競合もいますので、漫然と入札するだけでは難しいでしょう。受注確度を高めるためには経費計算の知識や経験が必要です。かなり勉強しなければなりませんが、経費計算ツールの活用で、ある程度の知識不足を補えます。
経費計算に精通していなくても、一定の水準まで精度を高めることができます。ツールを使って入札の経験を積みながら、経費計算のしくみを理解できます。精度の高い経費計算と適切な利益管理ができれば、入札での受注確度がアップします。システムを活用して入札に挑戦してみませんか?
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