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  4. 建設業界の2024年問題、残業を減らす取り組みの効果は出ている?

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 いよいよ1ヶ月を切った建設業界の2024年問題。時間外労働の上限規制の対策で、設備業の経営者、人事担当者の中には他社の取り組みが気になっている方も多いのではないでしょうか。時間外労働の上限規制の認知は高まっているものの、残業抑制の効果実感はまだ低めという調査結果が出ています。

残業時間が発生する要因とそれを解消するための取り組みについて解説します。

目次
-時間外労働の上限規制対策、効果実感は2割程度
(1)時間外労働上限規制の認知度7割、効果の実感は2割程度
(2)残業削減を実現するためのはじめの一歩
-残業削減への第一段階:残業時間の管理と勤怠管理による可視化
-残業削減への第二段階:業務の棚卸しとDX
-残業削減への第三段階:業務改善のふりかえり
-継続的な対策が求められる時間外労働の上限規制

時間外労働の上限規制対策、効果実感は2割程度

(1)時間外労働上限規制の認知度7割、効果の実感は2割程度

 施工管理アプリ「ANDPAD」を販売する株式会社アイティフォーが、時間外労働の上限規制について20〜69歳の建設業従事者を対象に独自に調査を行った「建設業界のDXに関する調査報告書」を発表しました。建設業界の幅広い職種が対象になっています。

 調査結果によると、時間外労働の上限規制厳格化に関する認知は67.1%と高まっており、残業時間を削減する取り組みとして、労働時間と残業時間の管理、週休2日制の導入などを行っている企業が多いようです。しかしながら、取組みの効果を実感していると回答した人は23.4%に留まっていることから、時間管理だけでは残業を抑制するのは難しいのではないかと考えられます。

 業務の内訳をみると1日に3時間以上「現場での作業・監督業務」を行っている人が約30%、同じく3時間以上「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」を行っている人が約25%となっています。これらを踏まえた「業務効率化したい業務」に関する質問では、「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」がトップに挙がっており、DXによる事務・管理作業の工数軽減を期待する声が大きいことがわかりました。

出典:建設業界「2024年問題」、認知は7割に高まるが取組成果の実感は2割(アンドパット)

(2)残業削減を実現するための始めの一歩

 この調査結果からは、経営者、管理者、従業員それぞれの立場で時間外労働の上限について認知し、残業削減が必須と認識していることがわかります。一方、対策が行われているにもかかわらず、残業削減の取り組みの効果を実感できていないという実態が明らかになりました。

 これには2つの原因が考えられます。ひとつは労務管理が適切に行われていない可能性です。労務管理で残業時間を抑制するには、労働時間を見ながら業務をコントロールする必要があります。そのためには少なくとも週単位で労働時間をチェックしなければなりません。労務管理と業務のマネジメントを連携させる必要があります。

 もうひとつの要因として時間管理だけで残業を削減するのは難しい、そもそもの業務量が多すぎることが考えられます。ご存じの通り、建設業界の人手不足は慢性的な問題ですので、今さらと思われるかもしれません。しかし、フワッとした状態だった課題が適正な労務管理を行うことで、明確に把握できるようになります。これこそが残業削減を実現するための「始めの一歩」と言えます。

残業時間が発生する要因は会社の状況で異なります。客観的な勤務時間の記録と適正な労務管理によって自社の課題が可視化され、的確に対応できるようになります。

<ここまでのポイント>
・時間外労働の上限規制認知は高まっている。
・残業時間抑制の取り組みの効果はまだ実感されていない。
・客観的な勤務時間の記録と適正な労務管理によって自社の課題を可視化できる。

残業削減への第一段階:残業時間の管理と勤怠管理による可視化

 前章の通り、残業削減を妨げる要因として適切な労務管理ができていないことと多すぎる業務量が考えられます。これらを解消する方法を解説していきます。

 残業削減への第一段階で求められるのは、残業時間の管理と勤怠管理による可視化です。残業時間の管理とは、労働基準法や労働協約に基づいて時間外労働の上限を設定し、それを超えないように管理することをさします。そこには業務量を調整し、仕事の進め方を指示することまで含まれます。それに対して、勤怠管理とは労働時間や残業時間を正確に記録し、報告や承認によって管理することをさします。勤怠管理の中に残業時間の管理が含まれるイメージです。

 紙日報を月末に集計する形でも結果としては可視化できるかもしれませんが、リアルタイムに残業時間を把握できないと、これから発生する残業を抑制するための働きかけは不可能です。残業の実態をリアルタイムに把握するための仕組みとして、勤怠管理システムを活用することをお勧めします。

 適切な勤怠管理によって労働時間や残業時間を可視化すると、業務負荷の集中や空き工数を発見しやすくなります。次の段階である業務の棚卸しとDXでこれらを解消すると生産性が向上します。

関連記事:【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制① 勤怠管理の客観的記録と可視化
関連記事:有給休暇の取得義務5日どう管理する?労基法違反を回避するために

<ここまでのポイント>
・勤怠管理とは労働時間や残業時間を正確に記録と報告や承認で管理すること。
・残業時間の管理には業務量の調整や仕事の進め方の指示まで含まれる。
・適切な勤怠管理によって業務負荷の集中や空き工数を発見しやすくなる。

残業削減への第二段階:業務の棚卸しとDX

 残業削減の第二段階は、業務の見直しによって残業時間を削減するアクションです。大きく分けて業務の棚卸しとDXがあります。業務の棚卸しとは自社の業務をすべて洗い出し、それぞれの目的や内容、担当者や関係者、所要時間や頻度、必要な資料やツールなどを明確にする作業です。

 業務の棚卸しによって改善すべきポイントが明らかになり、業務改善の方針を定められるようになります。業務改善にあたって、デジタル化で業務の標準化や自動化、最適化や高度化するのがDXです。これらによって業務の省力化や効率化を実現でき、残業削減につながります。

 業務の棚卸しを全社的に行った後に業務フローを適正化する流れになりますが、棚卸しの結果をもとにDXの優先順位や計画を立てていくのが一般的です。DXにあたっては従業員の教育や意識改革が必要になり、また導入効果を定期的に検証し、改善を続けることも必要です。

 業務の棚卸しとDXによって事務・管理作業を軽減すると、設計や積算見積、営業やアフターサービスなどのコア業務に集中できるようになります。また、コア業務自体もデジタル化で効率アップします。その結果、付加価値の高いサービスを提供できるようになり、お客様の満足度や信頼度を高める効果を期待できます。競争力を向上させ、新規の案件や顧客獲得によって収益性の向上につなげられます。

関連記事:【7分でわかる】DXが失敗する原因と成功の鍵となる「業務の棚卸し」
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関連記事:【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制③DXによる業務の流動化で生産性向上!

<ここまでのポイント>
・業務の棚卸しとDXによって業務の省力化や効率化を実現でき、残業削減につながる。
・競争力の向上と新規案件、顧客の獲得につながり、収益性向上も期待できる。

残業削減への第三段階:業務改善のふりかえり

 残業時間の管理は雇用が続く限り、必要な業務です。適正かつ効率的な業務プロセスの維持が残業削減につながります。業務改善で最適化した業務も業務内容や状況変化の影響で、効率の低下や手順の陳腐化が起こる可能性があります。生産性を維持するために、短期的・長期的な視点で業務改善の振り返りが必要になります。

 短期的には1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年といった節目で、業務改善によって業務がどう変わったか、どのような効果が出たか、さらなる改善が必要かという視点で検証と評価を行い、必要に応じてあらためて改善します。また、業務内容や社内体制の変更があった場合にはプロセスの変更が行われますが、部分的な変更を重ねることでプロセス全体の合理性が損なわれる可能性もありますので、長期の視点で定期的な見直す機会を設けるとよいでしょう。

関連記事:設備業のデジタル化、DX成功のカギとなる社員の適性と人材育成

<ここまでのポイント>
・業務改善の振り返りで適正かつ効率的な業務プロセスを維持できる。
・部分的な変更を重ねると生産性低下につながることも。長期的な振り返りも必要。

継続的な対策が求められる時間外労働の上限規制

 建設業界にとって、時間外労働の上限規制への対応は重要課題です。残業時間の管理や抑制は勤怠管理システムを導入しただけで終わるものではなく、適切な労務管理と業務のマネジメントを継続しなければなりません。そのために、リアルタイムに近い労働時間、残業時間の把握と管理が必要になります。同時に業務効率化・最適化のために業務の棚卸しやDXを行い、継続的な業務改善に取り組む必要があります。

 DXはハードルが高いと感じる方もいると思いますが、残業を減らすには従業員を増やして一人当たりの業務量を軽減するか、業務を効率化して一人がこなせる業務量を増やすかの二択になります。これから加速する賃上げや少子化による採用難を考慮すると、人を増やす方法には多くの課題がつきまといます。

 労働時間・残業時間の可視化からスタートして、一部の業務から段階的にデジタル化するスモールDXならば、導入にかかる費用や業務負荷を抑えられます。まずは日常的に使用する勤怠管理や日報、続いて残業の原因となる負荷の高い業務から始めると、デジタルが苦手なベテラン勢にも受け入れられやすいようです。DXの成功事例などもご用意していますので、ぜひご覧ください。

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