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  4. 【熱中症対策】猛暑の工事現場で作業員を守る労働安全のポイント

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エアコンを使えない工事現場では、コロナ感染よりも熱中症をおこした場合の方が重症化や死亡リスクが高く、夏場は熱中症への対策を優先しなければなりません。現場作業向けの対策グッズも充実していますが、グッズだけでなく、正しい知識を身につけ、働き方や体調管理から対策していくことが大切です。

目次
-建設現場における熱中症対策の事例
 -熱中症を予防するために5つの習慣
(1)定期的に水分、塩分を補給する
(2)日陰や屋内で休憩をとる
(3)朝食から食事をしっかりとる
(4)充分に睡眠をとる
(5)自分の体調の変化を意識する
-【重要】見逃してはいけない熱中症の兆候
-従業員を守るために会社がとるべき対策
(1)熱中症の予防法、対処法について周知する
(2)現場の状況を把握し、適切な働き方を指示する
(3)休憩スペース確保、冷却グッズ支給など
(4)作業中の様子をしっかり見守る
(5)暑さ指数(WBGT)、体調を管理、記録する
-夏場はコロナ以上の脅威!熱中症に正しい知識と対策を

建設現場における熱中症対策の事例

熱中症は、環境、からだ、行動の3つの要因によって引き起こしやすくなります。下表に該当する場合は、熱中症のリスクが高くなります。

環境気温が高い、湿度が高い、風が弱い、急激に暑くなった など
からだ高齢者、乳幼児、肥満、脱水状態、二日酔い、睡眠不足、低栄養、糖尿病、精神疾患など
行動長時間の屋外作業、水分補給をしない、激しい筋肉運動、慣れない運動 など

出典:熱中症予防情報サイト 熱中症の予防方法と対策(環境省)

冷房を使えない屋外作業が中心で、安全対策のために厚手の作業着を身につけなければならない建設業は、熱中症のリスクが高い職種のひとつです。現場用の接触冷感の素材や送風機付き作業着、簡易的な冷房設備など熱中症予防のアイテムが多数発売されています。

国土交通省では建設現場の熱中症対策事例集を作成し、公共工事における熱中症対策の参考とするよう推奨しています。また、塩飴、経口補水液などの飲料の作業員個人に対する熱中症対策費用は現場管理費として、日よけテント・大型扇風機など現場の施設や設備に対する費用は現場環境改善費として、それぞれ明示するよう定めています。たとえば、ペットボトルの経口補水液は現場管理費ですが、給水器や製氷機は現場環境改善費になります。ちょっとややこしいですね

出典:建設現場における熱中症対策事例集(国土交通省)

<ここまでのポイント> ・国土交通省が建設現場の熱中症対策事例をまとめて公表。 ・熱中症対策の費用は、個人向けの費用は現場管理費、施設や設備は現場環境改善費。

熱中症を予防するための5つの習慣

 熱中症の予防は、体調の変化を感じてからでは遅いです。作業中と日常生活の中で、熱中症を予防するための行動を習慣化することが大切です。

(1)定期的に水分、塩分を補給する

口から摂取した水分は吸収されるまでに30分ほどかかり、喉が渇いてからの補給では間に合わない場合があります。水分だけでなく、汗とともに蒸発した塩分の補給も必要です。発汗量によりますが、運動時に適した水分補給は15~30分に一度、200~250mL程度が望ましいと言われていますので、現場作業でも同等の頻度を目安にしましょう。

(2)日陰や屋内で休憩をとる

熱中症は、気温や労働によって高くなった体温が体内にこもることで発症します。本来、持っている体温調節機能が正常に機能しなくなるために起こります。こまめに風通しの良い日陰や冷房のある屋内で休憩をとり、上昇した体温を下げることで、体温調節機能を維持しやすくなります。

(3)朝食から食事をしっかりとる

脱水状態、低栄養は熱中症の原因になります。一日の活動を始める前に栄養バランスのよい朝食をしっかりとることで、塩分と水分を補給できます。

(4)充分に睡眠をとる

睡眠がとれないと疲労が蓄積し、体調が悪化します。熱中症リスクも高まります。睡眠中に熱中症を起こす場合もありますので、冷房を適切に使用して充分な睡眠をとりましょう。

(5)自分の体調の変化を意識する

軽度の熱中症に気づかずに放置していると、急激に重症化して昏倒したり、けいれんをおこしたりします。だるさや大量発汗などの初期症状を見逃さないよう、自分の体調の変化を意識しましょう。

<ここまでのポイント>
・熱中症の予防は、体調の変化を感じてからでは遅い。
・作業中の水分、塩分の補給と涼しい場所の休憩で体温調節と疲労を回復させる。
・栄養バランスのよい食事と睡眠をとり、体調管理を意識する。

【重要】見逃してはいけない熱中症の兆候

熱中症は、重症化すれば死に至ります。初期段階は水分・電解質を補給する点滴治療や体の冷却だけで回復できる可能性があります。最悪でもⅠ度(軽度)の段階で対処できるよう、熱中症の症状を理解しておく必要があります。全作業員に周知しましょう。

Ⅰ度(軽度)めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、湿疹など
Ⅱ度(中等度)頭痛、倦怠感、脱力感、めまいや立ちくらみ、吐き気や嘔吐、集中力や判断力の低下、臓器障害の可能性もあり。
Ⅲ度(重度)意識障害、異常な体温上昇、痙攣、肝・腎機能障害、血液凝固異常など

<ここまでのポイント>
・最悪でもⅠ度(軽度)で対処できるよう、熱中症の症状を周知。
・めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛を感じたら要注意。

従業員を守るために会社がとるべき対策

労基法(施行規則別表第1の2第2号の8)により、熱中症は業務上の疾病と規定されています。万が一、熱中症で倒れた作業員が休業したり、死亡したりした場合には労災申請が必要になります。その際、法令上、義務づけられている熱中症対策を講じられていたかどうかを問われます。

・塩及び飲料水を補給できるよう備えつける(労働安全衛生規則第617条)
・冷房、通風等の設備を備える(労働安全衛生規則第606条)
・半月ごとに気温,湿度,輻射熱を測定する(労働安全衛生規則第607条1項)

参考:【第7章】第1節 熱中症に関連する法令(一般社団法人中小企業建設業特別教育協会)

(1)熱中症の予防法、対処法について周知する

熱中症を予防するための働き方や生活上の注意、発症した場合の対処法について、すべての従業員に周知します。漠然と注意を促すのではなく、具体的な知識やリスクを共有することで指示を徹底させやすくなり、緊急時の対応もスムーズになります。無料で使用できる熱中症に関するWEB教材(要申請)も提供されています。

>熱中症予防教育 教育課程(一般社団法人中小企業建設業特別教育協会) >無料WEB教材の使用申請について

(2)現場の状況を把握し、適切な働き方を指示する

現場管理者は、暑さ指数(WBGT)や作業状況を踏まえて熱中症リスクを判断し、従業員が不調を感じる前に対処する役割が求められます。作業時間や現場の状況により、休憩時間を調整する判断も必要です。

(3)休憩スペース確保、飲料、冷却グッズの支給

冷房を備えた休憩スペース、塩分と水分の補給は法令に基づく対応であり、対処を怠った雇用者は責任を問われます。万が一の時に設備はあったが利用されていなかったということがないよう、すべての従業員が必ず利用するよう促すのも責任のうちです。屋外作業のための冷却グッズを活用するのも効果的です。

(4)作業中の様子をしっかり見守る

同じ条件で働いていても、年齢や体調によって熱中症のリスクには差異があります。また、周囲からみて様子がおかしいのに、本人は症状を自覚できない場合もあります。暑さ指数(WBGT)などの数値による判断基準に加えて、従業員個々の体調の観察を心がけましょう。

(5)暑さ指数・体調を管理・記録する

睡眠不足や疲労の蓄積など、個人の体調次第で熱中症を発症しやすくなります。たとえば、前日の飲酒によって脱水症状を起こすこともあります。勤務時間外の健康管理について注意を促し、就業前にその日の体調をチェックすることが推奨されています。

ご存じの方も多いと思いますが、熱中症が労災として認定されるためには、熱中症を発症していると診断されること(医学的診断要件)と、熱中症の発症が業務に起因すること(一般的認定要件)が必要です。労災申請時に提出する状況報告書によって、熱中症と業務の因果関係があると判断できる状況を具体的かつ客観的に記載しなければなりません。

労災の認定要件に、「作業条件及び温湿度条件などの把握」があります。熱中症の場合は暑さ指数(WBGT)や水分・塩分の補給などが指標となります。雇用者の安全配慮義務として朝礼時に体調報告などを行ったり、暑さ指数(WBGT)を記録したりするなどの対策を行いましょう。

<ここまでのポイント>
・熱中症による休業、死亡時には労災申請が必要。
・熱中症対策は雇用者の義務であり、従業員への周知徹底が求められる。

夏場はコロナ以上の脅威!熱中症に正しい知識と対策を

熱中症の恐ろしさは、症状やダメージに気づかない場合があることです。たとえば、午前中に普通に作業していた人が午後に倒れて重篤な熱中症に陥ったり、日中に休んで回復したと思っても就寝中に悪化して生命を脅かしたりするケースがあります。ある意味、夏場は熱中症の方がコロナよりもリスクが高いとも言えます。

熱中症対策でもっとも効果的なのは無理をしない、させないことと、現場にいる一人一人が気をつけ合うことです。経営者として、現場責任者として正しい知識と対策を身につけ、大切な従業員を守りましょう。作業時間が短くなることをデメリットに感じるかもしれませんが、長期的には生産性の維持につながります。作業員一人一人の様子をみながら、交代で早上がりさせるなどの工夫ができると理想的です。

万が一、熱中症による労災申請を行うことになれば、状況によっては労働基準監督署の立入り調査が入ります。その際には、適切な労務管理を行っていたことを証明する必要があります。

労務管理の基本は客観的な勤怠管理から始まります。Webの勤怠管理システムを活用すると、離れた現場で働いていても、日単位、週単位の勤務時間をほぼリアルタイムで把握できます。また、作業開始前の体調報告をすることもできます。厚生労働省の熱中症対策リストと組み合わせたり、自社独自のガイドラインを設けたりして、客観的な視点を取り入れると効果的です。

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