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  4. 積算見積のしくみを見直すことで資材価格の高騰に対応できる可能性があります。

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 建設資材の高騰は留まるところを知らず、建設物価調査会のレポートでも継続する見通しが示されています。いつまで高騰を続けるのか不透明な状況ではありますが、容易に好転しないことだけは想像できます。厳しい経済環境で生き抜くためには、価格変動への備えと同時に社内の体制を見直し、利益を確保できる体質に生まれ変わる必要があります。価格変動の兆候を理解する方法と利益確保のポイントを解説します。

目次
-建設資材の価格高騰が止まらない
-価格高騰の原因と価格変動の構造を理解しよう
(1)多方面に影響する原油高
(2)国際情勢の影響
-変動を予測できても対策につながらない場合も
-利益確保の3ステップ「見積」「実行予算」「原価管理」
(1)積算見積
(2)実行予算
(3)原価管理
-価格高騰に向き合うことで経営力アップに!

建設資材の価格高騰が止まらない

建設物価調査会が発表した建設物価調査レポートによると、2022月7月の建設資材物価指数は、建設総合全国平均が前月比1.4ポイント増加(134.1)し、最高値を更新しています。すなわち建設資材は、2020 年8月から24ヶ月連続、実に2年間に渡って上昇を続けている訳です。
特にウクライナ侵攻を境に上昇率は跳ね上がっています。鉄鉱石、鉄スクラップ、原油などの急騰、これらを受けた景気後退の懸念、中国ロックダウンによる内需縮小などの影響が、建設資材の原材料の動向を直撃した形です。
さらに同レポートでは、原材料価格の影響が大きい一次製品から二次製品への価格転嫁が進んでおり、未だコストアップ分を吸収しきれず、値上げ交渉を継続している資材が多いため、8月以降も上昇は続くという見通しが示されています。

 建設物価データを見積作成に活用している会社は多いですが、このようなレポートも参考にされるとよいと思います。建設業に特化した市場分析は、見積作成時だけでなく、経営判断の前提としても有用な情報と言えます。

出典:建設資材物価指数、最高値を更新(一般財団法人 建設物価調査会)


<ここまでのポイント>
・建設物価調査レポートでは8月以降も上昇は続くという見通し
・建設物価データは見積作成の基準データとしてだけでなく、市場分析にも役立っている

価格高騰の原因と価格変動の構造を理解しよう

個人では調査レポートのように緻密な分析は難しいですが、価格変動の構造を理解すると、今後の動向をイメージしやすくなります。「風が吹けば桶屋が儲かる」のしくみを理解しておけば、より早く価格変動の兆候に気づける可能性があるということです。皆様もご存じのことばかりでしょうが、あらためて整理しておきます。

(1)多方面に影響する原油高

 一般的には原油高というとガソリンの値上がりが注目されますが、設備業の資材には石油由来の製品が多いため、ウッドショックよりも影響が大きくなります。また、ガソリン値上がりによる物流コスト増も、いずれは資材価格に反映されてきます。ご存じの通り、日本では原油の流通に政府が関与していますので、原油価格の変動が市場に反映されるまでにタイムラグがあります。世界の経済情勢の好不況や政治情勢に応じて行われる石油輸出国機構(OPEC)加盟国の生産調整や原油の先物情報の動きは、少し先の資材価格に影響してきます。


(2)国際情勢の影響

 新型コロナの感染拡大による各方面での生産縮小の影響で原油価格は下落傾向にありましたが、ウクライナ危機でエネルギー需給のバランスは大きく崩れました。日本政府もロシアに代わる供給先探しに奔走する日々が続いています。これを機に代替エネルギーへの関心も高まっていますが、再生可能エネルギーへの移行には相当の時間がかかるでしょう。現在の資材価格高騰はこうした国際情勢の影響が何重にも折り重なった結果です。海外の出来事や経済にもアンテナをたてておくと市場の動きはイメージしやすくなります。

<ここまでのポイント>
・資材価格高騰の背景には「風が吹けば桶屋が儲かる」的な事情がある
・市場予測のキーワードは、原油価格と国際情勢

変動を予測できても対策につながらない場合も

価格動向について考える場合は、国や業界団体の動きを知ることも必要です。国はよりよい形で経済を回すため、業界団体は業界の活性化と事業者を保護するためにさまざまな対策をとります。税制優遇や補助金、助成制度などを見逃さないようアンテナをたてておきましょう。

しかし、価格変動を予測できても、事業者レベルでの対処には限界があります。たとえば、価格高騰を警戒するあまり、見積単価を高くし過ぎると受注確度が下がってしまいます。利益確保しつつ受注できる、「損をしない」見積を作成することが大切になります。

<ここまでのポイント>
・価格変動を予測できても、事業者としての対処には限界がある
・利益確保しつつ受注できる、「損をしない」見積を作成することが大切

利益確保の3ステップ「見積」「実行予算」「原価管理」

 利益を確保するためには見積から受注判断、工事の各プロセスで、利益を生みだすための意識と行動を定着させることが重要です。利益確保のための3つのステップについて解説します。これらの3ステップをシステム連携することで、収益構造の可視化と一元管理を実現できます。

(1)積算見積

 最初に求められるのは、積算見積の精度を高めることです。拾いの誤差が最小限であることはもちろん、単価や経費の設定が常に適切でなければなりません。しかしながら、見積の精度を高めたからと言って、すべての工事を受注できるようにはなりません。また、そもそもの条件として収益を出しづらい物件もあります。見積作成に工数をかけ過ぎると、生産性が低下してしまう可能性もあります。
最小限の労力で「損をしない見積」を作成するには、積算見積システムの活用が効果的です。見積データの一元管理によって見積作成を標準化できるようになり、工事ごとの収益が可視化されます。

(2)実行予算

 実行予算は、工事原価を管理するために着工前に作成するのが一般的ですが、省略している会社もあります。見積額ではなく、実行予算を管理することで、より適切かつ現実的な原価管理が可能になります。
その他に、積算見積システムの実行予算管理の機能を、受注シミュレーションに活用できます。実行予算は見積から変動する要素や経費などを反映した工事を行う際の予算ですから、どれだけ利益が出るかを簡単に把握できます。実行予算の受注額や単価を調整することで、「いくらで受注すれば、どれだけの利益を確保できるか」をシステム上で試算できます。

(3)原価管理

 「損をしない見積」で受注すれば、契約金額の中に最低限の利益は含まれます。しかし、資材価格の急騰や不測の事態が起きて原価がかさむ可能性があります。工事を進めながら原価を把握し、管理していくことも重要です。原価管理を行うことで社員に原価意識が定着し、現場のムリ・ムダ・ムラを解消にもつながります。

<ここまでのポイント>
・利益確保には見積から受注判断、工事の各プロセスでの意識と行動が重要
・積算見積、実行予算、原価管理を適切に行うことが利益確保につながる

価格高騰に向き合うことで会社の地力アップに

世界中が新型コロナ不況の影響を受ける中で、トヨタは2019年のひとり勝ちと言われた増益に続いて、2020年3月期を減収増益で終わりました。多くの自動車メーカーが半導体不足による業績低下となった中では好業績と言えますが、その一因には「調達力の強化」が挙げられました。
多くの素材や部品を必要とする自動車の生産は、「調達」に大きな影響を受けます。実際、部品供給がストップして、操業停止を余儀なくされたケースはご存じかと思います。トヨタは2009年の東日本大震災以降、調達力の強化に注力しました。その取り組みによって、業績への影響を最小限に抑えられたと考えられます。
この取り組みは「トヨタにしかできない」ことではないはずです。もちろん、トヨタ並みの調達力をつけるべきという意味ではありません。貴社ならではの資材価格高騰への対応策、利益を確保する仕組みづくりをご提案したいのです。
先行き不透明な苦しい状況はこれからも続きます。だからこそ少しでも多くの利益を確保できるよう、拾いから原価管理までの運用構築を考える良いキッカケとされてはいかがでしょうか。価格高騰に向き合う対策が会社の地力アップ、すなわち経営力の強化につながります。

■見積積算システムとは ■原価管理システムとは

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