1. HOME
  2. ブログ
  3. 法改正
  4. 令和5年の電帳法改正、紙保存と検索要件の緩和など最新情報を解説!

BLOG

ブログ

2022年12月に閣議決定された令和5年度税制改正大綱に、電子帳簿保存法、インボイス制度の改正が含まれています。度重なる改正で、電子帳簿保存はどこまでやれば正解なのかがわからくなってしまった方もいると思います。電帳法改正のポイントと中小企業でも無理なくできるデジタル化について解説します。

目次
-電帳法改正!令和5年度税制改正大綱より
-どう変わる?令和5年の電帳法改正ポイント
 (1)電子取引保存の要件、対象が変更
 (2)スキャナ保存したデータの要件緩和
 (3)「優良な電子帳簿」の範囲の変更
-2024年以降も紙保存を続けるメリットは?
-段階的なデジタル化「スモールDX」という考え方
-電帳法は過渡期。国のデジタル化推進は揺らがない

電帳法改正!令和5年度税制改正大綱より

 2022年12月23日、令和5年度税制改正の大綱の概要が閣議決定されました。広く税制を見直す施策の一環として、適格請求書等保存方式(インボイス)、電子帳簿等保存制度の見直しが含まれており、電子帳簿保存法の改正については、以下の3点が決められています。デジタル化が進んでいなかった中小企業にとっても取り組みやすくなった印象です。


・電磁的記録の保存ができない場合の猶予措置
電子取引の取引情報の電磁的記録を保存できなかった場合に、相当の理由があれば猶予措置が設けられます。

・検索機能確保の要件についての緩和措置
電磁的記録を保存する際に求められる検索機能の要件が緩和されます。

・過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿の範囲を合理化・明確化
優良な電子帳簿で記録されている場合、申告漏れなどの修正申告に関する過少申告加算税が5%軽減されますが、その優良な電子帳簿の範囲が新たに明確化されます。

出典:令和5年度税制改正の大綱の概要

<ここまでのポイント>
・電帳法改正により、猶予措置や緩和措置が設けられた。
・デジタル未対応の中小企業にも取り組みやすくなった。

どう変わる?令和5年の電帳法改正ポイント

あらためて、令和5年の電帳法改正の要点を確認しましょう。

(1)電子取引保存の要件、対象が変更

①検索要件の緩和
売上5000万円以下の事業者もしくは、税務署等の求めがあったときにすぐに提出できる場合は、電子データの検索要件が不要になります。
改正前は、取引年月日、取引金額、取引先など、最低3つの条件で検索できることが求められていましたが、即座に提出できる状態で保存されていればよくなりました。フォルダ等で仕訳するだけでもよいことになります。

②電磁的記録の保存をする人に関する情報の確認要件廃止
誰が保存したかを確認できるようにする必要がなくなります。

③要件を満たさない電子データ保存も可能
要件を満たさない電子データ保存があっても、相当の理由があり、かつすぐに印刷できる状態であれば容認されます。

(2)スキャナ保存したデータの要件緩和

①解像度、諧調、大きさの要件廃止
スキャナ保存する際の解像度、諧調などの詳細な条件が廃止され、鮮明に読めればよいということになります。

②入力者等に関する情報の確認要件廃止
実際にスキャンした担当者を記録する必要がなくなります。

③相互関連性要件の対象を重要書類に限定
スキャンした書類と帳簿との関連性の担保する範囲が重要書類に限定されます。重要書類とは、領収書、請求書、契約書等をさし、納品書、見積書、申込書等は除外されます。

(3)「優良な電子帳簿」の範囲の変更

電帳法では「優良な電子帳簿」を使用している場合、税務署の指摘が入って修正申告する場合の過小申告加算税の額が5%軽減されます。その要件である「優良な電子帳簿」の範囲が以下の通り変更され、明確化されます。ご存じの通り、仕訳帳、総勘定元帳は会計ソフトの標準的な機能です。会計ソフトを選定する際に、それ以下の8項目に対応している製品を選べばよいことになります。


 <優良な電子帳簿の範囲>
 ・仕訳帳
 ・総勘定元帳
 ・融通手形を除く手形上の債権債務に関する事項
 ・売掛金その他債権に関する事項
 ・買掛金その他債務に関する事項
 ・商品以外の有価証券に関する事項
 ・減価償却資産に関する事項
 ・繰延資産に関する事項
 ・売上その他収入に関する事項
 ・仕入れその他経費又は費用(賃金、給料手当、法定福利費及び厚生費を除く)に関する事項

出典:電子帳簿保存法が改正されました(国税庁)

<ここまでのポイント>
・検索要件、スキャナ保存の要件が大幅に緩和される。
・相当の理由があれば、電子データ保存が完璧でなくても容認される。
・「優良な電子帳簿」の範囲が明確になった。

2024年以降も紙保存を続けるメリットは?

 今回の電帳法改正では、2年間の緩和措置が本則にもりこまれるため、2024年以降も電磁的記録を紙で保存することが容認されるようになりました。慣れ親しんだ紙保存を続けられることに安心感を覚える人もいるでしょう。

 役所関係の申請や届出が電子化され、紙かデジタルかの申請方法によって処理に要する時間の差が生じます。これには郵便配達にかかる時間が長くなったことも影響しています。紙の書類のやりとりにかかかる時間やコストを理由に、デジタルにシフトする企業が増えるのは間違いありません。

 電子申請や取引が主流になる中で、紙保存にこだわる理由はあるでしょうか。デジタルには、処理の早さ、コスト削減、事務作業の負荷軽減などのメリットがあります。

 資料として手元に紙の書類を持ちたい人がゼロにはならないと思いますが、必要な時に印刷することを禁止された訳ではありません。実際、デスクからファイルを取り出して必要な書類を探すより、少ない手間で電子データにたどりつけます。最初は抵抗があっても、慣れてしまえば印刷する手間が面倒に感じるようになるでしょう。電帳法の強制力がなかったとしても、電子保存に移行する会社は増えていくと考えられます。

<ここまでのポイント>
・2024年以降も電磁的記録を紙で保存することが容認される。
・デジタルの優位性は処理の早さ、コスト削減、作業負荷軽減などのメリット。

段階的なデジタル化「スモールDX」という考え方

 DXへの取り組みは、デジタル化が遅れている中小企業には非常に高いハードルといえます。システム導入のコストだけでなく、ITに精通した人材の確保や会社全体のITリテラシーやマンパワーが求められ、投資、人材、人手が手薄な中小企業には負担が大きくなります。

 さらに、電帳法改正やインボイス制度のような法対応には期限があり、業務改善を行う機会ではあるものの、自社の裁量で進められないことが負担になります。大企業と比較すると、ヒト・モノ・カネに制約がある中小企業が、大企業と同じペースでデジタル化を行うのは無理があります。

 中小企業には、自社のニーズや事情にあわせて段階的にデジタル化する「スモールDX」がおススメです。大まかには以下のような考え方ですが、最終段階である全業務のデジタル化によって、課題の可視化、新たなサービスなどの価値を期待できます。

 ①会社全体の業務を見直し、デジタル化の優先順位をつける
 ②優先度の高い業務からデジタル化する
 ③デジタル化した業務と業務をつないでいく

 石田データサービスの「こうじやさんシリーズ」は、拾い、積算見積、工事原価管理、スケジュール管理、勤怠管理の各業務に特化したソフトからなる、設備業向けソフトのシリーズです。各製品を個別に導入しても、導入後に連携させてワンストップで業務を管理できます。導入する順番にも制約はなく、設備業のスモールDXを実現する機能をご用意しています。

<ここまでのポイント>
・中小企業が、大企業のように一度にデジタル化を行うのは負担が大きい。
・自社のニーズや事情にあわせて段階的にデジタル化する「スモールDX」がおススメ。
・「こうじやさんシリーズ」は各業務に特化したソフトを個別に導入して連携できる。

電帳法は過渡期。国のデジタル化推進は揺らがない

 令和5年の電帳法改正では随所に大幅な緩和が盛りこまれ、中小企業にも現実的な制度になっています。電帳法では経過措置と法改正が重なり、混乱を招いていることは否定できません。すでに改正前の基準で対応を済ませ、「ここまでやらなくてもよかったのに」と思っている方も、業務のデジタル化が進んで損をすることはありません。

 今後、試行錯誤があったとしても、国のデジタル化推進は間違いなく加速するでしょう。具体的な方向性を決めるのはそれからでも間に合うと思われます。当面は法対応ではなく、自社の業務改善や生産性向上のため、スモールDXでできる範囲からデジタル化を進めてはいかがでしょうか。

関連記事