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  4. インボイス制度、本当の課題とは?③インボイス対応からスモールDX、業務効率化と生産性向上

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 インボイス制度による事務作業の負荷は個人事業主、小規模事業者の経営を圧迫するという指摘があり、デザイナー・クリエイターなどの個人事業主によって支えられている業界からは強い抗議の声があがっています。避けて通れないインボイス対応の事務処理と負担軽減のポイントを解説します。

目次
-インボイス制度対応で増える業務負担は?
-残業の割増率引き上げがダブルパンチに
-インボイス対応で変わる事務処理のポイント
(1)インボイスを発行する際の注意点
(2)受け取ったインボイスの取り扱い
(3)インボイスをどう保管するか
-2024年1月には電子帳簿保存法義務化も
-見積作成・工事原価管理・請求・入金管理のデジタル化で負担軽減

インボイス制度対応で増える業務負担は?

 従来の請求書は明細や消費税の集計の法的な決まりごとはなく、自社に都合がよい書式を用いることができました。インボイス制度では適格請求書の要件を満たさなければならず、従来の請求書発行よりも手間がかかります。

 さらに手がかかるのは受け取ったインボイスの処理です。
まず、インボイス施行によって仕訳の条件が複雑になります。税率ごと、免税事業者とインボイス発行事業者、制度施行の前と後で、それぞれに扱いが変わってきます。制度施行の前後は今年度のみですが、免税事業者への経過措置は2029年までに段階的に変わっていくため、さらに混乱しやすくなります。

 請求書の軽微な不備を双方合意して赤入れ修正して済ませるケースもありましたが、インボイスの記載内容が誤っていた場合は必ず再発行しないといけなくなります。仕入れ税額控除の対象になるのはインボイスで請求された消費税額のみであるため、インボイスの不備が原因で控除できなくなる場合があります。

2024年1月から電帳法が完全義務化されるため、電子インボイスの場合は電帳法に基づく管理が必要になります。

<ここまでのポイント>
・適格請求書の要件を満たした書式で請求書を発行しなければならない。
・税率ごと、免税事業者とインボイス発行事業者、制度施行の前後など仕訳の条件が複雑。
・インボイスの記載不備で仕入れ税額控除ができなくなる場合がある。

残業の割増率引き上げがダブルパンチに

 2023年4月から時間外労働の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用されており、月60時間を超える残業には50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならなくなっています。これはかなり大きな負担増ではないでしょうか。

 インボイス施行の10月は半期決算と重なる事業者も多く、ただでさえ経理担当者の残業が増える時期です。その時期に新制度への対応で業務量が増えれば、もともと少人数で業務を回している会社では、残業して対処せざるを得ないでしょう。インボイス施行のタイミングだけなく、月ごとの経理業務の負荷を増大します。人件費による利益圧迫を避けるため、業務の効率化はマストと言えます。

<ここまでのポイント>
・2023年4月から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上に。
・人件費による利益圧迫を避けるため、業務の効率化はマスト。

インボイス対応で変わる事務処理のポイント

 インボイス対応で変わる事務処理のポイントを解説します。主に経理担当者の仕事ですが、経理処理が変わるために、営業や工事担当の仕事に影響が出る場合があります。

(1)インボイスを発行する際の注意点

 インボイスの書式は以下の要件を満たしている必要があります。①、②、⑤、⑥は請求書式を正しく作成できれば問題ありません。建設業では軽減税率の対象品目を取り扱うケースは少ないですが、③軽減税率の対象品目と④税率ごとの区分は都度変わるため、注意が必要です。

インボイスの記載要件
①インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)と適用税率
⑤消費税額等 ※端数処理は一請求書あたり、税率ごとに1回ずつ
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

(2)受け取ったインボイスの取り扱い

 インボイスと非インボイスの請求を分けて管理する必要があります。ここでは受け取ったインボイスの取り扱いの流れを説明します。記載不備があるとインボイスとして機能しないため、受け取ったインボイスが要件を満たしているかを確認しなければなりません。また、発行した業者がインボイス発行事業者として登録されているかの確認も必要です。そのうえで税率ごとに分けて管理します。

受け取ったインボイスの取り扱いの流れ
①取引開始時にインボイス発行事業者登録を確認する
②受け取った請求書がインボイスの要件を満たしているか(前項参照)
③インボイスに記載不備があれば必ず再発行を依頼する
④税率ごとに分けて管理する

(3)インボイスをどう保管するか

 保存期間は従来の請求書と同じ7年間ですが、電子インボイスは電子帳簿保存法に基づいた管理が必要となります。

 電子帳簿の保管には、ファイル名に得意先(取引先)・金額・日付を手入力で記載する、Excel 等でファイル名と得意先・金額・日付を紐づけて記録するなどの方法がありますが、かなりの時間と手間がかかります。電子帳簿保存に対応するソフトウエアを利用するのがお奨めです。

(4)免税事業者の扱い

 免税事業者はインボイスを発行できませんが、2029年までの経過措置期は部分的に仕訳税額控除を行えます。インボイス発行事業者と控除率が違うため、両者が混在するとかなり煩雑になります。また、インボイスでない請求書に消費税相当額を記載することは、違法ではありません。但し、仕入れ税額控除の対象にはならないため、取引先と話し合っておく必要があります。

<ここまでのポイント>
・インボイスは発行と受取りでそれぞれに新たな処理が発生する。
・電子インボイスの保管には電帳法に基づく管理が必要。

2024年1月には電子帳簿保存法義務化も

 インボイス制度では、発行請求書と受取り請求書と両方で複雑な作業が発生します。何らかの対処をしなければ、経理担当者の業務負荷は確実に増加します。

 さらに2024年1月には電子帳簿保存法が完全義務化され、電子取引の文書をデータ保存しなければならなくなります。令和5年度税制改正で定められた猶予措置によって、以下の要件を満たしていれば改ざん防⽌や検索機能などの要件は免除されます。つまり、電子データを保存しておくだけでもよいのですが、これらを満たせる電子データ保存のルールづくりとそれに基づく管理が必要になります。

・判定期間の売上高5,000万円以下の事業者
・国税庁等による電磁記録のダウンロードの求めに応じることができる
→電子データをプリントアウトした書面を提示または提出できる状態にしておく。書面は整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。(注;書面だけ保存するのではなく、電子データ保存が必須)

 いずれにしても、経理担当者の業務量は増すばかりであり、インボイス、電帳法の対応が落ち着くまでは、残業時間の増加はやむを得ないと考える経営者も多いでしょう。

 しかし、ご存じの通り、2024年4月には、建設業でも残業時間の上限規制(月45時間、年360時間まで)が施行されます。これには罰則も設けられています。そして、手書きや捺印などの記録は客観的な労働時間の根拠として認められなくなり、実質的にはシステムによる勤怠記録がマストになります。

 企業規模に関係なく、社会全体のしくみとしてデジタル化が求められています。中小企業はデジタル化に対して消極的な傾向がありますが、デジタル化で生産性が向上する可能性はかなり高いです。インボイスや電帳法への対応をデジタル化のチャンスととらえ、積極的に向き合われてはいかがでしょうか。

参考:電子帳簿保存法の内容が改正されました(国税庁)

<ここまでのポイント>
・注文書や請求書をメールでやりとりした場合にも電帳法対応が必要。
・改正労働法ではシステムなどによる勤怠管理が必須となる。
・インボイスや電帳法をチャンスととらえ、デジタル化に向き合うべき。

見積作成・工事原価管理・請求・入金管理のデジタル化で負担軽減

 インボイス発行事業者として登録する場合、インボイス対応で発生する事務処理を避けて通ることはできません。業務負荷による残業時間の増加が、人件費の負担増、労基法違反などのリスクが生じます。さらに人的ミスも発生しやすくなり、生産性低下の悪循環が起こりやすくなります。管理部門の業務負荷によって、せっかく生み出した利益が目減りしてしまう可能性もあります。

 生産性向上に有効なのが業務のデジタル化です。見積作成、工事原価管理・請求・入金管理の一連の流れをデジタル化すると、営業・工事・管理すべての業務で負担が軽減されます。案件発生から完工後の処理までの業務全体を一気通貫でデジタル化することが重要です。業務ごとに別々のシステムを選ぶと、製品同士が連携できず、結局は重複入力が発生することになってしまい、デジタル化しても業務効率は悪いままという可能性もあります。

 石田データサービスの「こうじやさんシリーズ」は、設備業の業務プロセスをシームレスに連携でき、段階的に導入してもミスマッチが起こりません。本丸・二の丸を導入すると見積書作成から工事原価管理を網羅でき、インボイスの発行、仕訳にも対応します。工事報告書作成や給与計算、会計ソフトなどの他社製品とのデータ連携も豊富です。

 いずれもIT導入補助金の対象ツールですので、費用負担を抑えて、スモールスタートで無理なく、設備業のDXを実現します。業務課題の発見やデジタル化の進め方からご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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