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  4. 急増する建設業の倒産の理由、倒産回避のためにとるべき対策

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新型コロナウイルス感染症が5類移行し、私たちの生活や経済活動も活気を取り戻し始めています。その一方で建設業の倒産は急増し、2023年度も増加傾向が続くと見られています。物価高、人手不足など、2022年度の建設業の主な倒産理由と倒産を回避するために備えておくべきポイントを解説します。

目次
-建設業の倒産件数が6年ぶりの高水準となった背景
-倒産理由の上位は「物価高」「人手不足」「工期の長期化」
-重点課題は「価格転嫁」「待遇改善」「生産性向上」
(1)資材価格の高騰は受注金額に転嫁する
(2)待遇改善で人材獲得と離職を防止する
(3)工事原価上昇に生産性の向上で対応する
-倒産回避の対策にはデジタル化が有効

建設業の倒産件数が6年ぶりの高水準となった背景

 2022年度の建設業の倒産動向の統計が発表されました。上半期の時点で前年同期の2倍超でしたが、下半期に入っても増加の勢いは止まらず、最終的に1291件という結果でした。コロナ禍の渦中でのコロナ関連倒産の中心は飲食業や旅行業であり、建設業ではコロナ融資などの資金繰り支援策の効果によって、2021年度は倒産件数そのものが記録的な低水準でした。それが2022年に入り、急激に増加した形です。

 この調査を実施した帝国データバンクでは、建設業の倒産増加傾向はコロナ融資の返済がピークを迎える2023年度も続くとし、人件費、材料費などのコスト増加を価格転嫁できない、中小規模の建設事業者への影響は大きくなっていくと見ています。

参考:2022年度の「建設業」倒産動向(帝国データバンク)

関連記事:
建設業の物価高倒産が急増!建設物価を活用して赤字受注を回避する方法

<ここまでのポイント>
・2022年度の建設業の倒産は1291件の大幅な増加。
・コロナ融資返済とコスト増を価格転嫁できない中小規模事業者の倒産リスクは続く。

倒産理由の上位は「物価高」「人手不足」「工期の長期化」

 ご存じの通り、2022年度は原油高、円安などの影響で建設資材の価格が急騰したことに加え、人手不足による人材確保の難しさや政府の賃上げ政策の影響で人件費も高騰しました。その結果、工事原価は上昇を続け、発注者に対する発言力が弱く、コスト増加を価格転嫁できない事業者には大きなダメージとなりました。建設業の主な倒産理由はコロナではなく、物価高と人手不足でした。

 特に人手不足については、高齢による引退や転職による流出で建築士や施工管理者などの有資格者がいなくなり、事業が立ち行かなくなって倒産や廃業となるケースも増えているようです。

 また、工期の長期化によって、収益やキャッシュフローが悪化するという悪循環も生まれました。建設資材は価格高騰だけでなく、製造や物流の乱れによって品薄や納期遅れが頻発しました。また、工事原価の上昇によって予定価格よりも見積金額が高くなったために発注が遅れる、職人がいないなどの理由も、着工のずれ込みや工期の長期化を招きました。工期が予定通りに進まなければ、資材や人手の確保のために余分なコストが発生し、入金までのサイクルも長くなります。その結果、収益性やキャッシュフローが悪化し、経営を圧迫していきます。

 倒産理由はさまざまですが、直接的なダメージになるのは赤字とキャッシュフロー悪化です。今回のように資材価格の急騰で一時的に工事ごとの利幅が薄くなっても、キャッシュインとアウトのバランスがとれていれば、挽回できる可能性があります。また、コスト増のどのくらい収益に影響しているかを速やかに把握できれば、早急に対策してダメージを最小限に抑えることもできるでしょう。

 そのためには、工事ごとの利益確保とキャッシュフローを適切に維持することが重要です。案件発生から受注、現場と工事原価の管理、完工後までの各プロセスの状況をすぐに把握できるようにしおかなければ的確な判断ができず、対策が後手に回ることになります。

<ここまでのポイント>
・工事原価の上昇を価格転嫁できないと倒産リスクが高まる。
・工期の長期化によって収益やキャッシュフローが悪化する。
・各プロセスの状況をすぐに把握できるように管理することが重要。

重点課題は「価格転嫁」「待遇改善」「生産性向上」

 経営者の皆さんには説明するまでもないことですが、収益性とキャッシュフローの悪化は倒産の前兆であり、体力のない中小企業にとっては致命的なダメージになります。ここでは収益とキャッシュフローの悪化を回避するポイントを解説します。

(1)資材価格の高騰は受注金額に転嫁する

 長い工期の物件では資材を仕入れるタイミングで、見積を作成したときから価格が上がってしまう可能性があります。資材価格高騰などの対策として、国土交通省は価格スライドの施策を提示していますが、相手先によっては交渉が難しい場合もあるでしょう。しかし、営業上の貸し借りを約束できる場合などの例外を除けば、赤字工事にメリットはありません。日頃から価格交渉ができる関係性を築くこと、そして、価格転嫁せざるを得ないという根拠を示せるよう適切に工事原価を管理しましょう。

 工事ごとの収益確保のためには、受注前と受注後のそれぞれで工事原価を管理することが重要です。見積作成時に実行予算を作成して工事原価のシミュレーションを行うと、受注金額にどれだけの利益が含まれるかが明確になります。

関連記事: 建設業法の改正が2022年10月に施行、改正の目的とポイントを解説実行予算とは、組み方と活用方法、工事管理で注意すべきポイント【建設業の原価管理】工事原価を簡単に管理する方法

(2)待遇改善で人材獲得と離職を防止する

 人手不足でお悩みの中小企業では、「若手人材は採用するより定着させる方が難しい」という声を聴きます。人材獲得と早期離職防止のポイントは働きやすさとミスマッチの解消です。建設業の担い手不足は本当に深刻な状態ですから、柔軟な働き方を用意して高齢のベテラン社員に長く働いてもらうことと、若い世代が魅力を感じる環境づくりを並行して進める必要があります。

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(3)工事原価上昇に生産性の向上で対応する

 工事原価が上昇して工事ごとの利幅が少なくなったときに、工事原価以外のコストを抑えることで、利益を確保できる場合があります。無理にコスト削減をめざして従業員の人件費や待遇を下げると離職につながる可能性もあります。

 会社全体の生産性向上に取り組み、社員一人当たりの収益性を高める方向で考えるのがベターです。たとえば、サービスに付加価値をつけて単価をあげる、新規事業を立ち上げるなどの施策が考えられます。

 デジタル化によって、こうした取り組みを行うのがDXです。DXというとハードルが高く感じられますが、ひとつの業務プロセスから始めて段階的に業務全体に広げていく、スモールスタートのDXも可能です。

関連記事:
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<ここまでのポイント>
・資材価格の高騰や工事原価を受注金額に転嫁できるよう工事原価を適切に管理する。
・人材確保のために、ベテランも若手も働きやすい環境をつくる。
・スモールスタートのDXで生産性を向上させる。

倒産回避の対策にはデジタル化が有効

 倒産回避というと、資金調達や受注強化が思い浮かぶかもしれません。デジタル化にはコスト削減効果のイメージが強い方もいますが、それ以上に業務の流れを可視化できることのメリットが大きいです。収益構造や費用対効果、業務のムリ・ムラ・ムダが可視化され、業務の問題点や経営課題を解決できるようになります。

 無駄なコストや手間を省力化すれば、それだけ収益性はアップします。現場業務の課題やボトルネックを解消すれば、工期遅れやトラブルの回避につながります。さらに、省力化で生まれた時間と余力で、サービス向上や新規事業に取り組める可能性もあります。

 たとえて言えば、資金調達が倒産回避の対症療法であるのに対し、デジタル化はさまざまな角度から会社全体の体質を改善する根治療法と言えます。デジタル化への取り組みは、経営基盤の安定と生産性向上を継続的に維持する効果を期待できるのです。

 まずは、インボイスや電子帳簿保存法対応、勤怠管理など、法改正で対応が求められる部分から、デジタル化を検討されてはいかがでしょうか。

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