誰でも無料で使える「ChatGPT」の登場で、生成系AIが注目を集めています。パソコン、インターネット、スマートデバイスの普及に続いて、ビジネスは革命的な変化を迎えようとしているのかもしれません。
その一方で、高度な生成系AIがもたらす人類滅亡のリスクなども指摘されています。身近なリスクとして、AI活用がもたらす格差の出現も懸念されます。生成系AIに興味はあっても試したことがない方、これから知りたい方向けの生成系AIの入門編です。
目次
-話題のChatGPT、生成AIってなに?
(1)ChatGPT、生成AIとは
(2)生成AIにできること、できないこと
-身近にある生成AIを活用したサービス
(1)Googleの取り組み
(2)Microsoftの取り組み
-社会課題に向けたAI活用と見えている問題点
-今日から使える業務への活用例
-AIの挙動や弱みを理解して活用しよう
話題のChatGPT、生成AIってなに?
(1)ChatGPT、生成AIとは
ChatGPTに代表される生成系AIが話題になっています。AIとの自然言語によるコミュニケーションを通して回答を生成することから、ジェネレーティブAI(生成系AI)、生成AI、対話型AIなどとも呼ばれています。企業や自治体でも導入する取り組みが進んでおり、身近なサービスにも続々と生成系AIが組み込まれ始めています。
ChatGPTは、OpenAI社が開発・提供するテキスト生成AIです。ID登録すれば無料で利用できる手軽さから、ChatGPTの利用者は急増しています。有料プラン「ChatGPT Plus」でも月額20$ですから導入しやすい料金設定と言えます。ちなみに、有料プランを契約すると、ピークタイムでも優先的にChatGPTにアクセスできる、最新バージョン、新機能などを優先的に利用できるといったメリットがあります。また、GPT-4(現在の最新モデル)、Default(高速モデル)、Legacy(一般ユーザー向けモデル)の3つのモデルから利用目的にあわせて選択できます。試しに使ってみる程度なら、おそらく無料プランで充分ですが、使用頻度や回答の難易度が高くなるにつれて、有料プランのメリットが大きくなってくるでしょう。
(2)生成AIにできること、できないこと
ChatGPTはテキスト生成AIなので、生成する回答は文章やプログラムのコードなどテキストで表現できるものに限られます。テキスト以外では、画像、音楽、図面などを生成できるAIがあります。
これだけ見ると、生成系AIは「0から1を生み出せる」とも思うかもしれません。しかし、生成系AI自身が意志をもって創造を行うのではありません。ユーザからの創造物に関する指示(コマンドプロンプト)にもとづいて、与えられた指示を満たすものを生成するだけです。
その際、学習データが生成の根拠となりますので、学習データに含まれない情報には対応できません。また、指示(コマンドプロンプト)に具体性が欠けていたり、間違った内容だったりすると、期待するレベルの回答は得られません。
<ここまでのポイント>
・ChatGPTは無料で使えるが、ヘビーユーザーには有料プランも。
・AIは学習データに含まれない情報にはうまく対応できない。
身近にある生成AIを活用したサービス
ChatGPT が無料で利用できるように、今後もAIを使用する費用はゼロに近づいていくと予測されます。その結果、ごく近い将来には、文章、画像、動画、プログラムなどが短時間かつ無料で手に入るようになる可能性があります。ここでは、すでに身近にある生成系AIを活用したサービスを紹介します。
(1)Googleの取り組み
Googleは、生成系AI 「Bard」をリリースしました。Google アカウントを持つ18歳以上のユーザは、無料でGoogle Bardを使えます。日本語のサポートも2023年5月に始まっています。
(2)Microsoftの取り組み
Microsoft は、OpenAI社に1兆円規模の投資を行っており、自社AIに同社の大規模言語モデル(LLM)を採用しています。
・Bing
おなじみのMicrosoftの検索エンジンBingに、チャットAI(GPT-4)が搭載されています。このBing AIは、Windows 11のタスクバーやSkypeなどのツールに統合されつつありますので、私たちのパソコンでもすでにAIが動作している訳ですね。
・Microsoft 365 Copilot
Microsoft 365 Copilotは、カレンダー・メールなどのMicrosoft Graphのデータ、Microsoft 365アプリケーションが連携するアプリです。OpenAI 社の大規模言語モデル(LLM)をベースとしたAIで、データ作成・整理を得意としています。
<ここまでのポイント>
・近い将来、文章、画像、動画、プログラムなどが短時間かつ無料で手に入るようになる。
・Google、マイクロソフトのサービスでAIが提供されている。
社会課題に向けたAI活用と見えている問題点
加速するAI普及に対して、「センター・フォー・AI・セーフティー(非営利団体)」のWebサイトでAIによる人類滅亡のリスクに関する声明文が公開されました。現在のAIには、生命尊重の倫理観や道徳観、良心に基づく判断基準がないため、人類を滅ぼす行動を忌避しないと指摘されています。多くのAIの研究者、開発者、AI開発を推進する企業幹部らがこれを支持し、高度なAI開発の一時停止が求められています。
AI活用には一定のポリシーやガイドライン整備が不可欠であり、規制なしで濫用されると深刻なリスクがあることも間違いないでしょう。その一方で、AI活用によって世界各国が抱える社会課題を解決できることも事実です。
たとえば、先進国のほとんどが少子高齢化の問題に直面しています。出生人数の低下は労働人口の減少につながり、国家としての生産能力、すなわち国力そのものが低下していきます。その結果、福祉サービスや社会保険などのセーフティネットを維持できなくなる、消防、警察組織の規模縮小による治安悪化、公共サービスの低下などが起こり得ます。
少子高齢化の悪影響を回避するには、労働人口が減少しても生産能力を低下させないことです。AI活用による生産性向上は、労働人口減少に対する非常に有効な施策と考えられます。社会全体にAI活用が浸透し始めると、おそらくAIを活用できる会社とできない会社の間に、仕事の品質やスピード感の差異が生じます。その差異が、やがては競争力という形の格差になっていくと考えられます。
AI活用は、深刻かつスピーディーな対応が求められる社会課題への対応には大きな効果を期待できます。ビジネスにおいても、作業負荷の軽減だけでなく、多角的な視点を取り入れたり、ノウハウを収集したりなど、人材の層が薄い中小企業にこそ大きなメリットをもたらすでしょう。
<ここまでのポイント>
・AI活用には一定のポリシーやガイドライン整備が不可欠。
・少子高齢化などの社会課題への貢献が期待できる。
・人材の層が薄い中小企業にこそ大きなメリットをもたらす。
今日から使える業務への活用例
生成系AIは、どのような業務に使えるのでしょうか。生成系AIの活用例をあげてみます。メール文案やExcel関数の作成は、比較的シンプルなコマンドで実行できます。初めてAIを使ってみるなら、文章の要約や情報検索などから練習するのがおすすめです。初歩的なものから始めて複雑なコマンドプロンプトに慣れると、AIを使いこなせるようになります。
AIを利用する際に注意すべきは情報の取り扱いです。自社専用のAIでない場合は、個人や企業を特定できる情報や機密情報を登録するのは避けましょう。
<文章作成>
・メール文案
・新商品やサービスのネーミング、キャッチコピー
・スピーチ原稿
<プログラミング>
・エクセルの関数やマクロの作成
・プログラム開発
・アニメーション制作
<企画立案>
・会合のアイデアや段取り
・マーケティング戦略の立案
<分析>
・アンケート集計、分析
・文書評価(レポート、論文、職務経歴書など)
<ここまでのポイント>
・文章の要約や情報検索などから練習するのがおすすめ。
・個人や企業を特定できる情報や機密情報を登録するのはNG。
AIの挙動や弱みを理解して活用しよう
ChatGPTを使ったことがある方はご存じかと思いますが、AIは全知全能ではありません。指示されたことについて、学習したデータを参照・模倣しながら、回答を生成しているだけです。ですから、どのような回答が欲しいかを具体的に指示できないと、精度の高い回答は返ってきません。AIでどれだけのことができるかは、コマンドプロンプトを使いこなすスキルにかかっているのです。
そして残念ながら、AIが生成する回答には誤った内容や精度の低い回答が含まれます。仕事に使用する場合は、回答の品質や整合性、事実関係のチェックなどが絶対に必要です。基本的には自分が理解できる範囲で活用し、回答内容の正否を判断できない業務には使わないのが安全です。
AIの挙動や得手不得手を理解すると、活用しやすくなります。まずは楽しみながらいろいろ試してみて、自分にあった活用方法を見つけるとよいと思います。