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  4. 【業務改善助成金】賃金引き上げと設備投資で最大600万円まで!

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2023年度の最低賃金額が10月1日から施行されます。全国平均加重平均額1,004円と、過去最大引上げ幅となり、37都道府県における最低賃金が39円~47円ほど引き上げられる見通しです。ほぼ同じタイミングで、「業務改善助成金」の拡充が発表されました。業務改善助成金は賃金引き上げを行った事業者に対して、生産性向上のための設備投資に関する費用の一部を助成する取り組みです。

目次
-全国の最低賃金引き上げと業務改善助成金の拡充
-業務改善助成金とは
(1)業務改善助成金の概要
(2)業務改善助成金がもらえない不適格要件
(3)業務改善助成金申請の流れ
-設備投資に対象になるのは、どんなもの?
-知らないと損をするかも?不採択でも再トライできる

全国の最低賃金引き上げと業務改善助成金の拡充

 2023年8月18日、2023年度の都道府県別の最低賃金額が発表されました。10月から新たな最低賃金が適用され、37都道府県における最低賃金が39円~47円ほど引き上げられる見通しです。全国平均加重平均額は1,004円、昨年度の961円から43円引き上げとなり、過去最大引上げ幅となりました。

 最低賃金改定に伴い、賃金引き上げと生産性向上のための設備投資の取り組みを行った事業者を対象とする「業務改善助成金」が拡充されました。

<拡充された点>

  1. 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額
    拡充前:差額30円以内の事業場 → 拡充後:差額50円以内の事業場に拡大
  2. 申請する事業場が50人未満の場合に限り、賃金引き上げ後の申請が可能に。
      拡充前:賃金引き上げ前の交付申請が必須。
    拡充後:賃金引き上げ後でも申請できる(実績を添付のこと)
    賃上げ対象期間:令和5年4月1日から令和5年12月31日
  3. 助成率の区分となる金額の引き上げ
    実績報告で生産性要件を満たした事業者は、()内に相当する金額が上乗せされます。
    (a)助成率9/10
      拡充前:事業場内最低賃金870円未満 → 拡充後:900円未満に拡大
    (b)助成率4/5(9/10)
      拡充前:事業場内最低賃金870円以上920円未満 → 拡充後:900円以上950円未満に拡大
    (c)助成率3/4(4/5)
      拡充前:事業場内最低賃金920円以上 → 拡充後:950円以上に拡大

厚生労働省報道資料/8月31日から「業務改善助成金」を拡充

<ここまでのポイント>
・2023年10月の改定で37都道府県の最低賃金が引き上げ。
・最低賃金改定に伴い、業務改善助成金が拡充された。

業務改善助成金とは

 IT導入補助金の認知度はかなり高くなっていますが、業務改善助成金は知らない方もいらっしゃるかもしれません。そもそも、助成金と補助金の違いもあまり知られていません。助成金は、厚生労働省が施策に沿った取り組みを行う事業者に対して、取り組みにかかる費用等の一部を助成する事業です。補助金との違いは、取り組み内容を審査して採択を決定するのではなく、原則として要件を満たしていれば、助成金を受けられる点です。

(1)業務改善助成金の概要

 業務改善助成金は、事業場内最低賃金30円以上の引き上げを行った事業者に対し、「生産性向上に資する設備投資等」、すなわち機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練などにかかった費用の一部を助成する助成金です。つまり、業務改善助成金を受給するには、賃金引き上げと生産性向上への設備投資の両方を行う必要があります。

 事業場内最低賃金とは事業場で最も低い時間給をさし、地域別最低賃金の差額が50円以内(拡充前は差額30円以内)の事業場が助成対象の要件となります。最低賃金は時間あたりの賃金額となり、以下の計算方法で算定します。臨時に支払われる賃金、賞与など、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金、各種手当は最低賃金の算定に含みません。

日給賃金額÷1日の所定労働時間
月給賃金額÷1ヶ月の所定労働時間
固定給+
歩合給
固定給、歩合給それぞれを計算方法で算定して合算。
固定給:日給、月給いずれかで算定。
歩合給:直近1年間(雇入れ後1年未満は3ヶ月間以上)の合計額÷該当する期間の実労働時間の総計

出典:事業場内最低賃金等の計算方法について

 助成額は、設備投資等にかかった費用に助成率をかけた金額と助成上限額のいずれか低い金額となり、最大600万円までです。助成上限額は、最低賃金の引き上げ額と引き上げる労働者数で決まります。生産性要件を満たした場合は助成率が上がります。

出典:業務改善助成金拡充リーフレット(厚生労働省)

参考:業務改善助成金(厚生労働省)

(2)業務改善助成金がもらえない要件

 業務改善助成金は労働保険料が財源となっているため、雇用保険未加入の事業者や、申請した時点で労働保険を滞納している事業者は助成対象になりません。労働法令違反、事業主都合による解雇・退職も不交付事由となります。いかなる理由でも、会社から退職勧奨を行った場合は会社都合となります。それを自己都合退職と申告して助成金が交付されると不正受給に該当します。

<業務改善助成金不交付事由の例>

  • 雇用保険に加入していない。
  • 直近2年間に労働保険料、消費税、地方消費税、法人税の未納付がある。
  • 賃金引き上げ日の前後9ヵ月間に賃金引き下げを行っていない。
  • 6ヶ月以内の会社都合の解雇および退職 ・支給申請日の前日までの過去1年以内に労働関連法令に違反があった。
  • 過去5年以内に当該事業者が不正受給を行った、他事業者の不正受給に関与した役員等がいる。
  • 不正受給の返納や延滞金などの請求金が納付されていない。
  • 事業主または役員が、暴力団または、破防法が規定する暴力主義的破壊活動を行ったもしくは行う恐れのある団体に属している。
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業、またはこれらの一部を受託する事業主。

(3)業務改善助成金申請の流れ

 業務改善助成金の申請は、事業場所在地を管轄する都道府県労働局に対して行います。交付申請から助成金支払いまでの流れは以下の通りです。2023年12月31日までは、賃金引き上げ実施後に申請する場合、賃金引き上げ計画の提出が不要となります。

 令和5年度の業務改善助成金の事業期間は令和6年2月28日までとなっていますが、実際は予算分を交付した時点で終了します。例年、ほとんどの助成金が事業期間よりも早く終了しており、早い者勝ちという側面もあります。また、過去に業務改善助成金を受給した事業者も助成対象となります。

①交付申請管轄労働局の雇用環境・均等部に、賃金引き上げ計画(賃金引き上げ後の申請では不要)、事業実施計画書(設備投資等の計画)を提出する。 添付書類:登記簿謄本(法人)、直近2年間の納税証明書(消費税、地方消費税、法人税、個人の場合は所得税)、直近2年間の労働保険料申告書と納付書の写し ほか
②交付決定申請内容が要件を満たしていれば交付が決定し、通知される。
③事業の実施事業実施計画書に沿って、賃金の引き上げ、設備等の導入、代金の支払を実施する
④事業実績報告事業完了後、事業実績報告書等を提出し、助成金支給を申請する。
⑤交付額確定実績報告の内容が適正と認められれば交付額が確定する。
⑥助成金の支払い助成金が振り込まれる。

<ここまでのポイント>
・業務改善助成金は、事業内最低賃金を引き上げた事業者の設備投資等の費用を助成する。
・労働保険料の滞納、会社都合の解雇や退職があると受給できない。
・賃金引き上げ後に申請する場合は賃金引き上げ計画が不要になる。

業務改善助成金の助成対象は設備投資、具体的などこまで?

 業務改善助成金の助成対象は「機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練など」とされていますが、具体的にどんなものが対象となるのでしょうか。

 基本的には生産性向上、つまり業務の自動化、省力化、省エネ化、高度化、品質向上などの効果が期待できる機械や装置、ICT機器やソフトウェアは、概ね助成対象にできます。また、専門家による専門家による業務フロー見直しのコンサルティングや従業員の教育訓練費用も対象になります。

 建設業では、建設機械や測量機器、ドローンなどの事例があがっていますが、生産性向上につながるCADや材料拾い出し、積算見積、工事管理などのソフトウェアも助成対象になり得ます。具体的な事例は「生産性向上のヒント集」などで多数紹介されています。

参考:生産性向上のヒント集(厚生労働省)

<ここまでのポイント>
・業務の自動化、省力化、省エネ化、高度化、品質向上につながる設備投資。
・各種機械や装置、ICT機器やソフトウェアのほか、コンサルティングや研修費用も対象。

知らないと損をするかも?不採択でも再トライできる

 業務改善助成金では不交付理由を確認し、再申請や異議申し立てができます。不交付理由が、書類や実施計画の不備だった場合は修正して再申請すれば交付される可能性があります。「業務改善助成金がもらえない要件」の項で挙げた「不交付事由の例」に該当していなければ、諦めずに再トライしましょう。

 また、10月の最低賃金引き上げによって、「事業場内最低賃金と地域最低賃金の差が50円以内」に該当しやすくなり、助成対象でなかった会社が申請できるようになる可能性があります。まずは、自社内でもっとも低い賃金(時給換算)と地域の最低賃金の差額を計算してみましょう。

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