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  5. 設備業のデジタル化、DX成功のカギとなる社員の適性と人材育成

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 インボイス、電帳法対応など、中小企業でもデジタル化に取り組まざるをえない環境になりつつあります。建設業、設備業も例外ではなく、デジタル化からさらに踏みこんだDXに目を向ける会社も少しずつですが、増え始めています。しかし、DXの難しさ、失敗事例などを耳にする機会も多く、特に中小企業ではDXに取り組むための経営基盤や人材の不足がボトルネックとなっているようです。

 中小企業である設備業がDXを成功させるためのポイントを解説します。

目次
-デジタル化とDXはどう違う?成功させる5つのポイント
(1)DXの目的を明確にする
(2)業務の棚卸しをする
(3)現状の課題を明確にする
(4)従業員の意識を改革する
(5)スモールDX 小さく始めて業務全体に広げる
-デジタル化による業務の流動化が生産性向上に!
-DX成功のカギとなるのはこんな社員!適性と育成のポイント
(1)柔軟な考え方ができる
(2)物事を合理的に考える
(3)広い視野をもてる
(4)新しい取り組みや変化に抵抗がない
(5)人と関わるのが好き
-事務作業の省力化を営業や工事部門のサポートへ

デジタル化とDXはどう違う?成功させる5つのポイント

 DXはトレンドワードとして定着していますが、IT化とデジタル化、DXの違いがピンと来ていない方もいらっしゃるでしょう。いずれも業務にITを導入する点は共通していますが、目的やゴールが異なるため、考え方や取り組みが変わってきます。それぞれの目的や定義を下表にまとめました。

目的定義
IT化業務の効率化情報の活用度や価値を高め、デジタル化を進める
デジタイゼーション(デジタル化)工数やコストの削減伝票などを用いて手作業で処理していた業務をデジタルに置き換える
デジタライゼーション(データ活用)デジタルの適用デジタルによって作業や業務をシームレスに連携し、業務プロセス全体を効率化する
デジタルトランスフォーメーション(DX)業務やビジネスの変革デジタルによって製品やサービスの価値に新たな価値を創造し、企業文化・社風を変革させ、競争上の優位性を確立する。

 文字だけですと棲み分けがわかりづらいですが、図解するとこのような形になります。IT化、デジタル化ではそれ自体がゴールになりがちなのに対し、DXではITを用いて、サービスやビジネスモデル、場合によっては会社そのものの変革を実現します。

DXを成功させるための5つのポイントを解説します。

(1)DXの目的を明確にする

 DXのゴールは新たな価値創造や変革です。漠然と選んだシステムやデバイスを導入するだけでは実現できません。DXの取り組みによって達成したいこと、目標を明確化にすることが重要で。直近の業務効率化などではなく、5年後、10年後に事業や会社がどうありたいかをイメージし、明確な目標を定める必要があります。

(2)従業員の意識を改革する

 DXは、経営者と全従業員が一体感を持って取り組まければ、うまく進みません。部署ごとの縦割り意識や担当外の業務を他人事のように考えているようであれば、従業員の意識改革から始めなければなりません。社長のリーダーシップで会社全体を巻き込み、部署ごとにDXへの取り組みをけん引するリーダーが必要です。

(3)業務の棚卸しをする

 DXの目標設定と目標に向かう意識改革ができたら業務の棚卸を行い、自社の現状を可視化します。

<業務の棚卸の手順>

①業務分掌の作成:各部署の役割と担当業務を書き出す
②業務フローの作成:各部署の日常業務と部署間のつながりを書き出す
③IT活用の把握:利用しているシステム、外部サービスなどを書き出す

(4)現状の課題を明確にする

 DXで実現したい理想状態(あるべき姿やフロー)を作成し、業務の棚卸で可視化した現状とのギャップを洗い出します。課題の発見や課題解決の障害となる要素を明確にしていきます。現状の課題に加えて、社員の高齢化や人材不足、物価高などの社会課題にも対応できるよう想定しておく必要があります。

(5)スモールDX 小さく始めて業務全体に広げる

 企業によっては(特に中小企業では)、DXの取り組みによって負担が増える可能性があります。高すぎる理想を掲げると取り組みが長期化し、導入効果が得るまでに時間がかかりすぎると、経営を圧迫する場合もあります。中小企業には身の丈にあった目標を設定し、短期間で導入でき、すぐに成果を実感できるデジタル化が適しています。小さく始めて段階的に業務全体に広げていく、スモールスタートのDX「スモールDX」を推奨します。

<ここまでのポイント>
・DXには明確な目標と意識改革、現状分析による課題発見が必要。
・中小企業には、小さく始めて業務全体に広げるスモールDXがおすすめ。

デジタル化による業務の流動化が生産性向上に!

 デジタル化によってデータの一元管理やリアルタイムの情報共有ができるようになります。担当者以外でも状況を把握できるようになり、業務の属人化を避けられるという効果が期待できます。

 同時に業務のボトルネックが可視化され、業務負荷が高い人を把握できるようになります。つまり、業務負荷が高い人の担当業務を、デジタル化による効率化で業務負荷が軽減した人がサポートする体制をつくれます。部署や職種の垣根を取り払って業務分担を考える「業務の流動化」を実現できます。

 従業員数を増やさずにより多くの仕事を回せるようになり、収益性アップにつながります。

<ここまでのポイント>
・デジタル化により、部署や職種の垣根を取り払って業務分担を考えられる。
・従業員数を増やさずにより多くの仕事を回せるようになる。

DX成功のカギとなるのはこんな社員!適性と育成のポイント

 DXを成功させるには、経営者のリーダーシップと従業員ひとりひとりが当事者意識を持って取り組むことが必要です。DXの取り組みで業務の進め方や役割分担が変わります。従業員にはそうした変化を受け入れ、柔軟に対応する姿勢が求められます。

 また、DX推進では各部署をけん引するリーダーの存在が成功のカギとなります。中小企業では、組織の中間層となるリーダーやマネージャー人材がおらず、DX推進のボトルネックとなるケースも多いようです。DXの取り組みの中で将来のリーダーを育成する必要があります。

 DX人材と言うとITに精通した人というイメージがありますが、システム導入は外部サービスに頼ることもできますし、勉強すれば知識は身につけられます。IT知識よりも優先すべき、DXリーダーの適性と育成のポイントを解説します。

(1)柔軟な考え方ができる

 DXの新たな価値の創造や変革のためには、大胆な変更が必要になる場合があります。既存の役割分担や業務フローに固執するとうまくいきません。変化を受け入れる柔軟な考え方が求められます。思考の柔軟性は生来の資質による部分も大きいですが、多様な視点があることを理解することで、身についていく可能性があります。

(2)物事を合理的に考える

 感情や印象ではなく、客観性と合理性をもって何がベストかを判断できなければなりません。論理的な思考が苦手な人には向いていません。

(3)広い視野をもてる

 DXでは自分の部署だけでなく、事業や会社全体を視野に入れて考える必要があります。自部署の業務を変更したときに、前後の工程や顧客に対してどのような影響が生じるか、直近の予測だけでなく、5年後にどうなっているのかを考えられる視野が求められます。年齢や実務経験によって培われる部分は大きいですが、業務の全体像を知識として身につけ、高い視点から考える習慣をつけることで、自然に視野が広がっていきます。

(4)新しい取り組みや変化に抵抗がない

 一般的に若手ほど新しい取り組みや変化に抵抗がなく、年長者は変化を嫌うと傾向があると認識されていますが、個人差が大きいようです。新しい取り組みで成功した体験を多く持っている人は、年長になってもポジティブに受け入れます。個人の志向による部分も多いですが、新しい取り組みの成功体験を積ませるのが早道です。

(5)人と関わるのが好き

 DXは部署を横断する取り組みなので、社内外のあらゆる人とのコミュニケーションが不可欠な役割です。また、現場の声を聴き、業務の悩みや不満を聞く機会も多くなります。人と関わることが苦手な人にとっては、ストレスが溜まる役割と言えます。

<ここまでのポイント>
・リーダーやマネージャーの人材不足が、DX推進のボトルネックとなる。
・IT知識よりも優先すべき、DXリーダーの適性がある。
・DXの取り組みの中で将来のDXリーダーを育成すべき。

事務作業の省力化を営業や工事部門のサポートへ

 DXで事業やサービスを新たな創造すると考えると、かなりハードルが高くなります。しかし、DXによる業務を流動化して、営業や工事部門のサービスをブラッシュアップすることなら、社内の役割分担の見直しで対応できそうです。

 たとえば、拾い出しや積算見積システムの機能を活かせば、知識がない人でも、図面の読み込みや入力作業などを代行できます。現場管理者や営業担当者の指示を受けた事務スタッフが、積算や現場管理の業務の一部を肩代わりできるのです。

 拾い出しや積算見積などは専門知識や経験がないとできないという思いこみがありますが、本当に専門性が求められる部分を洗い出し、それ以外の作業分担は見直すことが可能です。それが本来の意味での業務の棚卸しと言えます。

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