建設業界でもドローン活用が普及し始めています。設備業におけるドローン導入のメリットや安全な活用法などを解説します。
さまざまな業界でドローンの活用が進んでいます。建設業界もその例にもれません。これからドローンの活用を検討したい方、すでに導入しているがもっと活用したいという方のためにドローンを「高価な玩具」で終わらせないためのポイントを解説します。
目次
-ドローンに何ができるか
(1)ドローンの種類
(2)ドローンにできること
-設備業のドローン活用事例
(1)高所の点検・設備監視
(2)配線・配管などのトラブルシューティング
(3)施工前の調査
-建設業におけるドローン活用のリスク
-AIとの組み合わせでさらに広がるドローン活用
-業務のデジタル化がドローンの可能性を広げる
ドローンに何ができるか
ドローンを活用するには、ドローンに何ができるかを理解することが大切です。業務利用に耐えるドローンでも、購入しやすい価格帯も増えてはいますが、簡単に買い替えられるほど安価ではありません。用途に合ったドローンを選ぶため、まずはドローンについて知るところから始めましょう。
(1)ドローンの種類
ドローンは、航空法において「無人航空機」と位置付けられます。無人航空機とは「人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」と定義されています。ドローンは、その形態によって3つのタイプに大別できます。使用する環境や用途に応じて、適したタイプがあります。
タイプ | 特徴 |
---|---|
マルチロータードローン | 3つ以上のローターを搭載した回転翼のタイプ。 ・飛行が安定度している ・垂直離着陸、360度の飛行ができる。 ・運動性の自由度が高く、狭い空間にアクセスできる。 ・高性能の位置情報を取得でき、空撮や測量に向いている。 ・軽量小型から大型まで種類が豊富で、用途に応じて選べる。 ・天候の影響を受けやすく、屋内使用に向いている。 |
固定翼ドローン | 揚力を得る主翼が機体に固定されているタイプ。飛行機型。 ・滑走路や発射台、人力スローイング等により離陸する。 ・着陸時も広いスペースが必要。 ・前進する時に発生する揚力で飛行する。 ・回転翼型と比較すると航続時間と距離が圧倒的に長い。 ・長時間飛行を活かした大規模なマッピングや設備等の監視ができる。 ・天候に左右されにくい。 |
ヘリコプタードローン | メインローターとテールローターを装備したヘリコプター型のタイプ。 ・離陸から姿勢制御を2つの出力を変化させて行う。 ・垂直離着陸、360度の飛行ができる。 ・機動性が高い。 ・高所点検や難しい環境での作業に適している。 ・操縦の難易度が高い。 |
(2)ドローンにできること
設備業では高所や狭い場所での点検や修理などの作業があり、人が入りづらく、危険を伴います。小型のドローンは、人間が入りづらい場所にも容易にたどり着くことができます。
高解像度カメラを搭載したドローンで、施設や設備の状態を視覚的に把握することができます。画像や動画や撮影によって、現状を正確に記録できます。
また、ドローンに、温度、湿度、ガス濃度などを計測するセンサーを搭載することもできます。データ収集による点検のほか、施設などの環境条件の監視にも使用できます。こうした機能は、防災設備の状態評価などに活用できます。
<ここまでのポイント>
・使用する環境や用途に応じて、適したタイプがある。
・高解像度カメラやセンサーで設備点検や監視を行える。
設備業のドローン活用事例
設備業におけるドローンの活用事例を紹介します。
(1)高所の点検・設備監視
ドローンは、高所の点検や設備監視で実用化されています。高所や狭小な配管など、これまでは頻繁に点検することができなかった設備も、容易に点検できるようになります。すでに、トンネル・橋梁・線路・発電所などの設備点検に活用されています。赤外線カメラによる点検では、屋根や外壁、太陽光パネルなどの劣化や損傷箇所を発見できます。
(2)配線・配管などのトラブルシューティング
設備のトラブルが生じた際、配線・配管のどの部分で問題が起きているかを特定することが重要です。しかし、広範な配線や配管の調査には時間がかかります。トラブル箇所の調査にドローンを活用すると、建物内や屋外など広い範囲の状態を視覚的に確認し、問題箇所をスムーズに特定できます。
(3)施工前の調査
プロジェクトに着手する前に、現地の調査やマッピングを行うことで、計画段階での誤差を最小限に抑える方法を模索できます。
<ここまでのポイント>
・高所点検、設備監視などで実用化されている。
・施工前の現地調査で使用すると計画の最適化にも貢献。
ドローン活用のリスク
ドローン活用にあたっては、リスクについて理解しておく必要があります。
ドローンと周辺機器の故障や操縦者のミスによって、事故が起きる可能性があります。ドローンは強風や雨などの悪天候の影響は受けやすく、墜落すれば人身傷害や物損事故を起こすリスクを抱えています。そのため、ドローンが飛行できる空域には法的な規制があり、特に人口が密集する都市や空港周辺では厳格な規制があります。
また、無線通信を介して操作するドローンは、通信のハッキングや不正アクセスのリスクが存在します。不正アクセスによってドローンの制御を奪われる、収集したデータを盗まれるといったリスクがあります。制御を奪われたドローンが人身事故や物損事故を起こす可能性もあります。
二次的なリスクとしては、ドローンで撮影した動画や画像がプライバシーを侵害する場合があります。プライベートなエリアや居住地域に侵入し、予期せぬ形で個人情報を収集してしまう懸念があります。
これらのリスクに対処するためには、ドローンに関する法規制やリスクを正しく理解し、適切なセキュリティ対策と運用マニュアルの整備が不可欠です。それらを遵守できるよう、従業員の教育を行うことが、ドローンを活用する会社の義務となります。
<ここまでのポイント>
・事故や不正アクセスなどで人身傷害や物損事故を起こすリスクがある。
・撮影した動画や画像がプライバシーを侵害する二次的なリスクも。
・適切なセキュリティ対策と運用マニュアル整備と従業員教育が不可欠。
AIとの組み合わせでさらに広がるドローン活用
AIを組み合わせることでドローンの自律航行が可能となり、画像認識やデータ解析の精度が向上します。業務のデジタル化により、収集したデータをそのまま業務プロセスに取り入れて、自動点検やトラッキング、データ分析プロセスなどを自動化することができます。
ドローンのセンサーやカメラを使用して収集した現場のデータから、リアルタイムで現場の進捗状況の把握や分析を行えます。蓄積したデータと現場のデータを組み合わせた高度なデータ分析や予測が可能になり、設備のメンテナンス計画の最適化やリスク管理の向上につながります。
ドローンによる遠隔監視で、専門職が現場に立ち会う機会を減らすことができます。複数の現場にリアルタイムで指示やアドバイスできるようになります。
<ドローンとAIの活用例>
・画像データをAIアルゴリズムに入力して、自動的に異常や欠陥を検出する。
配線の断線や漏水箇所の特定、劣化部分の検出などが可能に。人間の目視よりも高い精度で判断できる。
・ドローンによる撮影画像とAIによる施工監視
AIが、設計図や建設計画と現場の画像を比較して施工の進捗状況や品質を監視する。
施工の品質管理や進捗管理を行うことができる。
・ドローンが撮影した映像とAIによる安全管理
現場の映像をAIが解析し、安全上のリスクや危険個所の発見、作業員の行動や作業手順から、危険を察知する。
<ここまでのポイント>
・AIを組み合わせることで自律航行や画像認識やデータ解析ができる。
・業務のデジタル化で、収集したデータを取り入れて一部業務を自動化できる。
業務のデジタル化がドローンの可能性を広げる
ドローンの可能性や活用事例、セキュリティリスクとその対策などに焦点をあてて解説しました。
ドローンとデジタルと組み合わせることで、ドローンの活用の幅はさらに広がります。ドローンで行う作業の前後の工程がデジタル化されていれば、ドローンで収集したデータをそのまま取り入れて、次の作業を自動化できる可能性があります。そうでないと、ドローンは「空飛ぶカメラ」で終わってしまいます。もちろん、ドローンで高所作業が減少するだけでも効率アップはしますが、ドローンで収集したデータを最大限に活用できるよう考えてみましょう。
ドローン導入のコストを短期間で回収し、生産性向上につながるためにはデジタル化が不可欠と言えます。
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