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時間外労働の上限規制を解説する【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制の第三回です。

 慢性的な人手不足、採用難の問題を抱える設備業では、残業時間の削減による総労働時間の減少が売上減に直結します。残業を減らしても収益を維持するには、今までよりも生産性を高めなければなりません。残業の原因となる業務の属人化や特定の従業員への業務の集中を解消し、組織全体の生産性向上をめざす、DXによる業務の流動化について解説します。

【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制① 勤怠管理の客観的記録と可視化
【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制②業務の棚卸ししと適性化による残業削減

目次
-時間外労働は業務の流動化で減らせる!
(1)業務の流動化とは
(2)業務の流動化のメリット 
(3)業務の属人化を解消して「業務の流動化」をめざせ!
-業務の流動化に必要なポイント
(1)業務の標準化、一元化、可視化、最適化
(2)フラットな組織
(3)多能工型の人材育成
-業務の流動化にはDXが最適
(1)DXによる業務の流動化
(2)中小企業がDXを成功させるためのポイントと失敗要因
(3)優先度の高い業務から着手するスモールDXがおすすめ
(4)効果検証の指標にもなる勤怠管理のデジタル化
-時間外労働削減と同時に競争力の高い会社をめざせる!

時間外労働は業務の流動化で減らせる!

(1)業務の流動化とは

 業務の流動化は、担当者以外の業務の内容や状況を把握、対応できる状態にして、業務のプロセスを改善することをさします。

 時間外労働、つまり残業の原因の一つは業務の属人化です。業務の属人化は流動化とは真逆の状態で、特定の社員にしかできない、または代理で対応するのが難しい状態です。その結果、業務が集中する社員の時間外労働が増えたり、担当者の休暇や退職で業務が滞ったりするリスクがあります。

 業務の属人化を解消するためには、業務の流動化が必要です。業務の手順を見直して、標準化、一元化することで、業務の移管や代行がしやすくなります。業務の流動化に必要な、業務の標準化、一元化、可視化には、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が有効です。

(2)業務の流動化のメリット

 業務を流動化できると、一部の社員に業務が集中しなくなります。たとえば、業務が集中しやすい施工管理者や見積担当者を、比較的業務負荷の少ない事務職や若手社員がサポートできるようにもなるでしょう。業務の流動化には、以下のようなメリットがあります。

<業務の流動化によるメリットの例>
①時間外労働の上限規制への対策:業務が集中する社員の残業時間を削減する。
②人手不足対策:業務効率が高まり、同じ人数でより多くの業務をこなせる(生産性向上)。
③人材育成:施工管理者などのサポートを通して専門知識やノウハウを身につけられる。

 業務の流動化は、残業削減による時間外労働の上限規制への対策だけでなく、社内の人材育成や競争力を高める効果も期待できます。

関連記事:施工管理者の業務はもっと効率化できる!施工管理の業務棚卸し

(3)業務の属人化を解消して「業務の流動化」をめざせ!

 施工管理者に若手社員や事務員を補佐として使うよう指示しても、「自分でやった方が早い」と難色を示す場合があります。多忙な施工管理者や見積担当にとっては、説明や指導に時間をとられるのは大きな負担です。しかし、多忙な社員が仕事を抱え込んだままにすると、時間外労働の上限規制に抵触することになります。

 業務プロセスをデジタル化することで、業務に必要なデータや過去資料が共有され、簡単に検索や参照ができるようになります。システムやツールの活用で、口頭で説明するのが難しい作業手順が条件や数値を入力するだけで処理できる場合があります。また、業務やサービスに関するデータやシステムをクラウドに移行することで、移動中や現場のスキマ時間、在宅でも仕事ができるようになります。デジタル化によって、業務の一部や全体の自動化もできます。時間やコストを大幅に削減され、ケアレスミスを削減できます。

 DXによって業務の属人化を解消し、業務の流動化をめざすことで、喫緊の課題である時間外労働の上限規制への対応に加えて、生産性向上や経営基盤の強化につながります。

<ここまでのポイント>
・時間外労働の上限規制で求められる残業時間の削減には業務の流動化が有効。
・業務負荷の集中の原因となる属人化解消には業務の標準化、一元化などが必要。
・業務の流動化により、残業の削減、生産性向上、人材育成の効果が期待できる。

業務の流動化に必要なポイント

(1)業務の標準化、一元化、可視化、最適化

 業務の属人化は、業務が標準化されていない、分担されていない、最適化されていないことによって起こります。属人化解消につながる、業務の標準化、一元化、可視化、最適化について解説します。

標準化業務の手順やルールを統一し、業務の品質や効率を向上させます。業務の手順やルールをマニュアル化することで、代理対応や引継ぎが容易になります。
一元化業務に関するデータやシステムを一つの場所に集約することです。部署間の連携や協力がスムーズになります。また、業務の分担や移譲が容易になります。
可視化業務の進捗状況や成果を誰が見てもわかる状態にします。業務の進捗管理や改善・評価が明確になります。顧客対応や経営判断のスピード感がアップします。
最適化業務のデータやフィードバックを収集し、業務の効果や価値を最大化するために分析・改善します。やりっぱなしにせず、PDCAサイクルを繰り返すことが大切です。

(2)フラットな組織

 業務の流動化の障害となるのは、タテワリ型の組織です。一般的にタテワリ組織は組織の階層や権限のしばりが多く、従業員の自主性や参加性が低くなる傾向があります。その結果、業務負荷にバラつきが生じやすいです。一方、組織の階層や権限のしばりが少ないフラットな組織ほど、部署の垣根を超えてサポートできるチームワークを強化しやすいと言えます。組織の風通しの良さと情報共有のしやすさは比例します。

(3)多能工型の人材育成

 中小企業が業務を流動化しようとすると、従業員の少なさがボトルネックとなる場合があります。それを解消するのが、複数分野のスキルをもつ多能工型人材です。多能工型人材とシステム活用によって、部署や職種の垣根を越えて、業務をサポートする体制が作れます。たとえば、工事部門の社員が現場に出ている時間に事務職が工事管理や見積作成業務の一部を代行できるようになります。

 業務を横断して柔軟に対応できる多能工型人材が増えれば、最小限の人数で業務をまわせるようになり、新たな事業やサービスへの挑戦もしやすくなります。従業員にとっても、業務のやりがいや成長感を感じられる機会が増えます。

 多能工型人材を育成するには、日常的なフィードバックや評価制度を通して、スキルアップや未経験業務に積極的に取り組む姿勢を評価する文化が必要です。従業員のスキルを多様化させることが業務の流動化を後押しになります。

<ここまでのポイント>
・業務の流動化には、標準化、一元化、可視化、最適化が必要。
・タテワリ組織は業務の流動化の障害となり、風通しの良いフラットな組織はやりやすい。
・多能工型人材とシステム活用で部署や職種の垣根を越えて業務を分担できる。

業務の流動化にはDXが最適

 デジタル化、DXは、業務の流動化には欠かせない取り組みです。DXで業務の流動化に必要な標準化、一元化、可視化、最適化が実現します。DXによる業務の流動化について解説します。

(1)DXによる業務の流動化

 業務の流動化につながるDXのプロセスを大まかに説明します。

①業務の棚卸し~課題の明確化
 DXを成功させるには、業務の現状や課題を踏まえた明確な目標設定が必要です。最初に業務の現状や課題や目標を明確にする「業務の棚卸し」を行います。棚卸しで課題が明らかになると、業務改善の方針や手法が決められます。現状や目標を明確にしておくことで、導入後の効果検証がスムーズになります。

関連記事:【7分でわかる】DXが失敗する原因と成功の鍵となる「業務の棚卸し」

②導入する製品・サービスの選定
 導入する製品やサービスの選定では、業務の特性や要件を満たすことが大前提ですが、導入や操作のしやすさ、導入費用や運用保守などのコスト、リスクなども考慮しなければなりません。導入・運用を親身にサポートするベンダーを選ぶことをお勧めします。

③社内へのシステム導入~浸透
 せっかく導入したシステムやサービスも、活用できなければ無駄になります。選定段階では、実際に使用する現場の声にしっかり耳を傾け、導入前後の負荷を最小化する配慮と従業員の合意や納得感を形成することが大切です。導入時研修やサポートを丁寧に行います。

④効果検証とPDCA
 業務改善とシステム導入では効果検証とPDCAサイクルによる改善が重要です。導入のビフォーアフターのデータや従業員や顧客・取引先などの声を収集し、分析・改善を定期的に行います。

(2)中小企業がDXを成功させるためのポイントと失敗要因

 中小企業がDXを成功させるには、経営者自らDXの必要性や方針を示すことから始めなければなりません。経営者のリーダーシップと充分な体制や予算確保によって、従業員や関係者の理解とモチベーションも高まります。DX推進のリーダーとなる人材も重要です。中小企業ではDXの知識やスキルを持つ人材がいない場合も多いですが、外部からコンサルティングなどの支援を受ける方法があります。反対に、DXが失敗する要因について挙げてみます。

<DXが失敗する要因の例>

①DXの目的や求める効果が不明瞭
 DXの目的や求める効果が不明瞭な状態では、具体的な施策や計画を立てられず、導入後の評価もできません。また、曖昧な方針や目標では、DXに関する従業員や関係者の理解を得ることも難しくなります。

②DXの推進体制や予算などが不足している
 DXを推進する体制やマンパワー、予算などの資源が不足した状態では、DXの計画や実行は難しいです。経営者がリーダーに丸投げしてDXが失敗するケースは多いようです。

③導入しても活用されない
 導入しても活用されず、DXの機能が発揮されない場合もあります。社内の合意形成ができない状態で新しいシステムや業務プロセスが導入されると、従業員の不満や抵抗が発生する場合があります。

(3)優先度の高い業務から着手するスモールDXがおすすめ

 予算や人材が限られる中小企業では、一部から着手して全体に拡大していく、スモールスタートのDXがおススメです。段階的なDXで一度に投資するコストを低減できます。効果を検証しながら導入できるため、失敗のリスクを低減し、蓄積したノウハウを生かして効果を最大化できます。また、小さい導入負荷で効果を実感しながら進められるので、従業員の理解やモチベーションを高めやすくなります。

 スモールDXでは、優先度の高い業務から着手することが重要です。業務の現状や課題や目標から、コスト削減や顧客満足度向上や競争力強化などの効果を分析し、業務の重要度や緊急度などの視点で優先度を判断します。

(4)効果検証の指標にもなる勤怠管理のデジタル化

 その業務に携わる従業員の労働時間は、DXの方針を決める際と効果検証の指標になります。勤怠管理のデジタル化によって、業務の流動化やDXの効果が可視化され、評価しやすくなります。勤怠情報を正確に把握することで、時間外労働の原因や課題や改善策を見つけることができます。

関連記事:設備業のデジタル化、DX成功のカギとなる社員の適性と人材育成

<ここまでのポイント>
・会社の総意として取り組み、予算確保や体制、合意形成を整える必要がある。
・中小企業には優先度の高い業務から着手するスモールDXが最適。
・勤怠管理のデジタル化でビフォーアフターの効果検証がしやすくなる。

時間外労働削減と同時に競争力の高い会社をめざせる!

 時間外労働の上限規制の全面施行に向け、デジタル化、DXによる業務の流動化の有効性やメリットを解説しました。デジタル化、DXによって業務プロセスの柔軟性が高まり、業務負荷を分散しやすくなります。長時間労働の減少、休暇のとりやすさなど、働きやすい職場づくりにつながります。また、顧客対応のスピード感やサービス品質の向上も期待できます。データの一元化、可視化は、経営者の意思決定のスピードアップや競争力アップに影響します。

 経営者の視点では、時間外労働の上限規制は負担でしかないでしょう。しかし、時間外労働の上限規制への対策を通して、生産性向上や人材確保・定着につながる働きやすい環境づくりを実現できます。デジタル化、DXを取り入れる企業には補助金や税制などの支援があります。時間外労働の上限規制は、企業としての競争力を高め、安定して成長できる経営基盤を築くチャンスとも考えられます。

【2024年問題】デジタル化による施工管理者不足対策と助成金活用

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