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設備業でも女性従業員の能力を積極的に活用したいと考える経営者が増え、組合の女性部会の活動なども活発になっています。事業を継続・発展させるためには、女性の人材活用は避けて通れない課題になると言えます。

これまで男性多数だった設備業が積極的に女性を受け入れ、活躍してもらうためには、会社全体でジェンダーについて理解しておかなければなりません。場合によっては、会社の文化や常識から見直していく必要も生じます。

ジェンダー問題とは、社会的・文化的な性別(ジェンダー)にもとづく偏見や、賃金格差といった経済的な不平等に関する問題のことです。

ジェンダーへの理解と無意識の偏見を解消することで誰もが働きやすい職場をめざし、すべての人材の能力を最大限に発揮できる環境づくりへの第一歩としていただければと思います。

目次
-社会的信用を失う?ジェンダー問題
-男性多数の建設業・設備業だからこそ知っておくべきジェンダー問題
-無意識にジェンダー差別をしないために自分の考え方をチェックしてみよう!
-【人材活用の事例】女性が働きやすい会社は男性も働きやすい
-経営者、管理職のジェンダー意識を変えることが急務

社会的信用を失う?ジェンダー問題

近年、ジェンダーの考え方が大きく変化しています。「時代が変わった」という受け止めもできますが、「本来あるべき状態に近づいてきた」と考えるべきでしょう。ジェンダー問題は個人の権利や倫理の枠組みを超え、社会的信用の喪失や経営リスクに発展します。一度でもジェンダー問題のトラブルを起こすと企業の評価や与信に影響します。SNSが普及する現代では、ネット上に流れたネガティブな評判を完全に打ち消すことは不可能です。

ニュースで頻繁に見かけるセクシャルハラスメントは個人が処分されますが、根底にはジェンダーに対する理解不足があります。こうした問題が起きる組織では、ジェンダー差別が存在する傾向があります。

設備業は男性が多数を占めてきましたが、これからは女性にも活躍してほしいと期待する会社が増えています。設備業にかぎらず、女性の能力を活かせない会社は人材採用でも不利になり、生産性が低下するリスクを抱えています。優秀な人材を確保し、能力を発揮してもらうためにも、ジェンダー差別をなくす取り組みが求められます。

<ここまでのポイント>
・ジェンダー問題のトラブルは社会的信用の喪失や経営リスク。
・女性の能力を活かせない会社は生産性低下のリスクを抱えている。

男性多数の建設業・設備業だからこそ知っておくべきジェンダー問題

ジェンダー差別というと女性が不平等・不利益を被る印象が強いですが、実際には男性も差別を受けています。無意識のうちにジェンダー差別が行われるケースが多く、「無意識の偏見」と呼ばれる、性別に関する固定観念が原因で起こっています。

「無意識の偏見」のわかりやすい例として、「女性は技術職に向かない」「事務は女性の役割」といった職業適性や「女性は感情的、男性は論理的」などの個人の資質や能力をジェンダーで決めつけるケースがあります。こうした偏見は社会全体に根づいており、業務の分担や人事評価にも影響し、男女間の賃金格差を生んでいます。

ほめ言葉のつもりで「さすが女性は・・・」という表現が出てくる人は、「無意識の偏見」があるかもしれないので注意しましょう。怖いのは、ほめた相手から反感を買っている可能性があることです。悪意がないから自覚が持てず、気づかないうちに加害者になっているのがジェンダー差別の本当の怖さです。

女性の能力を活用したいと考えるなら、まずは「無意識の偏見」を取り払い、個人の能力や適性を正しく見極め、適切な評価を行わなければなりません。適切な評価や待遇が与えられない状態で、一方的に役割や職責だけ増やそうとしても、意欲をもって働いてくれるはずがありません。経営者や管理職と女性従業員の間に信頼関係が築かれていることも大切です。

<ここまでのポイント>
・ジェンダー差別の原因は「無意識の偏見」と呼ばれる性別に関する固定観念。
・女性の能力を活用したいなら「無意識の偏見」を取り払うことが必須。
・経営者や管理職と女性従業員の間の信頼関係も大切。

無意識にジェンダー差別をしないために自分の考え方をチェックしてみよう!

ジェンダー差別の大半は偏った認知や思い込みである「無意識の偏見」が原因となっています。差別する側に悪意はなく、これまでに培った常識に基づいた言動が「無意識の差別」になっているのです。

「無意識の差別」をする人は、これまで受け入れられていた言動を急に否定されたように感じ、「時代が変わった」という解釈で、自分の中にある「無意識の偏見」を正当化してしまう場合があります。これは経営者や管理職にあたる中高年層によく見られる傾向で、ちょっとした行き違いからパワハラ、セクハラの加害者になってしまうのもこの年代が多いです。「無意識の偏見」が、ジェンダーだけでなく対人関係全般に及んでいると考えられます。

「無意識の偏見」から生じるジェンダー差別は、仕事のコミュニケーションや評価に悪影響を及ぼし、女性の能力を活かせない原因になります。たとえば、女性の能力を評価せず、補助的な役割しかできないと決めつけるのは「無意識の差別」にあたり、女性は結婚や出産で退職するからと、人材育成や昇格のチャンスを与えないのは「明確なジェンダー差別」です。最近では育休取得した男性社員が上司や同僚から嫌がらせを受ける「パタニティハラスメント(パタハラ)」が起きています。これは「育児は女性の役割」という「無意識の偏見」に基づく差別であり、主に男性から男性に対して行われています。

そのような状況の中「無意識の偏見」を解消する研修に力を入れる企業が増えています。中小企業はこうした教育まで手が回らないかもしれませんが、人数が少ない分、経営者の言葉が社員ひとりひとりに届きやすい利点があります。経営者が自分の中の「無意識の偏見」を解消し、自分の言葉で組織全体に広げていくことが大切です。

まずは、自分の中の「無意識の偏見」が存在するかを知るところから始めましょう。無意識の偏見や態度を測定する「IAT」という心理学的テストがあります。ハーバード大学の「Implicit」サイトで無料で受けられますので、興味のある方はお試しください。

参考:IATテスト ホームページ (harvard.edu)

テストはハードルが高いという方には、公益社団法人ACジャパンが制作したテレビCMが参考になるかもしれません。マンガのセリフによって無意識の思い込みや偏見に気づかせ、ジェンダー平等について考えるきっかけになる仕掛けです。正確なチェックにはなりませんが、ご自身のジェンダー意識を確認する機会になれば幸いです。

参考:2023年度全国キャンペーン:聞こえてきた声|ACジャパン (ad-c.or.jp)

<ここまでのポイント>
・ジェンダー差別をしないためには「無意識の偏見」をなくすことが必要。
・経営者が「無意識の偏見」を解消し、自分の言葉で組織全体に広げていく
・まずは自分の中に「無意識の偏見」が存在するかを知るところから

【人材活用の事例】女性が働きやすい会社は男性も働きやすい

建設業界でも自動化や機械化の取組みが進み、少しずつですが性別による役割分担の必然性が減少しているため、女性が能力を発揮できる領域はますます広がっていくでしょう。

そして、これからは若い世代を中心に男性の育児休暇取得が定着し、女性従業員のために用意した育児支援の制度を男性従業員が利用するようになります。女性が働きやすい環境は、男性にとっても居心地の良い職場なのです。ワークライフバランスが整った環境は、人材採用でもアピール材料となります。

参考として、女性の人材活用の事例集から、事務職の女性を作業工程管理等の資料作成事務を担当する「現場支援担当者」に育成した、建設業の事例の一部を要約して紹介します。

出典:企業における女性の活躍推進事例集(平成 29 年度 厚生労働省委託 女性就業支援全国展開事業 一般財団法人女性労働協会)

会社名株式会社井木組
設立1912 年
本社所在地鳥取県東伯郡琴浦町
社員数正社員139 名(男性117名、女性22名)
業 種建設業
URLhttp://igigumi.jp

■事務職の女性を「現場支援担当者」に育成

特定の男性社員への業務の偏りを改善するため、作業工程管理等の資料作成事務を担う「現場支援担当者」を設置し、一定の効果があがったが、「現場支援担当者」を担う社員の不足が課題となった。そこで事務職の女性を「現場支援担当者」に育成することになり、部署長と工務管理、総務が連携を取り、業務マニュアルの作成や仕事の手順を明確化するなど、受け入れ態勢の整備を行った。

その結果、作業工程管理等の事務支援だけでなく、繁忙期には現場作業の支援もこなすまでに活躍するようになり、現場の慢性的な残業が解消された。

過去には女性の現場監督や建築士等の技能者が在職しており、会社として女性登用に積極的だったこともあり、事務職から現場支援担当者への異動希望があがるようになった。女性事務職の職域が広がり、スキルアップ、モチベーションアップにもつながった。

<ここまでのポイント>
・女性の能力を活かせる会社は、競争力を高められる。
・女性が働きやすい環境は、男性にとっても居心地の良い職場。
・事務職の女性を「現場支援担当者」に育成した事例がある。

経営者、管理職から意識を変えることが急務

日本はジェンダー問題については後進国という評価に甘んじていますが、少しずつ考え方や社会の枠組みが変わり始めています。その中で居心地の悪さを感じる人は、中高年の男性に多いようです。この居心地の悪さこそ「無意識の偏見」の存在を示唆しています。強硬なジェンダー論では「女性は男性社会に搾取されてきた」という論調すら見かけます。これを極端な意見と捉えてしまうと、リスクの軽視になるかもしれません。

経営者や管理職が率先してジェンダーについて学び、意識を変えることで、深刻なトラブルを防ぐことができます。逆差別になるような優遇は必要ありませんが、女性の視点を取り入れて働きやすさを考慮することが、女性の能力活用につながります。

男性社員が担当していた領域を女性社員に引き継ぐ際に、業務の棚卸しやデジタル化を一緒に行うと引継ぎがスムーズになり、業務効率もアップします。女性が活躍しやすい職場づくりで、事業の存続と成長をめざしましょう!

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