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  5. デジタル化で解決できる?設備業のリスクと収益の伸び悩み

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 インボイス、電子帳簿保存法、時間外労働の上限規制、業務への影響が大きい法改正が相次ぎ、設備業は大きな転換期を迎えていると言えます。法改正がもたらす経営環境の変化で、これまでは危機感を持たなかったリスクが急速に顕在化しています。
設備業にとって喫緊の課題となるリスク管理に、デジタル化は貢献できるのでしょうか。設備業が直面する課題とその対策について、デジタル活用にフォーカスして解説します。

目次
-どう対処する?設備業のリスク
(1)設備業で想定されるリスク
(2)データの一元管理でリスクを見える化
(3)目に見えるリスクは対処しやすい
-2年後、3年後はどうなる?受注と収益の減少
(1)物価高による利幅の減少
(2)懸念される工事件数の減少
(3)働き方改革、人手不足による受注件数の減少
-会社を存続させるために必要なことは?
(1)会社を存続させるための戦略
(2)デジタル化で実現する中小企業の生存戦略
-設備業のリスクと収益の伸び悩みは表裏一体

どう対処する?設備業のリスク

 建設業界では長引く物価高や2024年問題によって、いくつものリスクが具体的に表面化し、多くの経営者が不安視していた状況が現実で起こり始めています。設備業のリスクと対策について解説します。

(1)設備業で想定されるリスク

 はじめに、設備業で想定されるリスクを洗い出してみましょう。課題解決では「洗い出し」の作業がとても大切です。事業上のリスクの多くは、経営上のリスクを解消することで回避できます。

<事業上のリスク>

想定される影響
市場ニーズの変化 市場ニーズの変化についていけなくなると受注減少につながります。
技術革新の遅れ 新しい技術への対応が遅れると競争力を失い、受注減少につながります。
コスト上昇 原材料費のコスト上昇を、受注額に反映できないと収益が圧迫されます。
事故・労働災害の発生 管理者責任を問われ、事故被害者への補償が発生します。重大な過失があった場合は取引・営業停止の処分や受注減につながります。
事件・資材などの盗難 増加する資機材などの盗難も収益の圧迫につながります。

<経営上のリスク>

想定される影響
経営戦略 市場分析や経営判断の失敗により、市場ニーズの変化や技術革新についていけなくなります。
財務 業績好調でもキャッシュフローが悪いと運転資金の調達に苦労したり、その借入れが経営を圧迫したりします。
コンプライアンス 悪質な違反があると罰則が課され、取引停止や営業停止の処分もあります。
事故・自然災害 適切に対応していないと、被害による損失に加えて損害賠償も発生します。
セキュリティ 悪意ある攻撃による業務停止や情報漏洩が急増しています。
マネジメント 従業員のコンプライアンス違反やハラスメントの監督責任を問われます。

(2)データの一元管理でリスクを見える化

 事業上のリスクは業務の状況を把握することで回避できますが、設備業では工事ごとの状況を把握するのにかなりの手間がかかります。工事管理のデジタル化によって、積算見積から工事原価、工事の進捗状況、資材の在庫、従業員の稼働状況などのすべてのデータを一元管理できます。これにより、案件ごとのリスクから経営上のリスクまで可視化できます。

(3)目に見えるリスクは対処しやすい

 デジタル化によってリスクが可視化されると、問題発見と対処が容易になります。たとえば、工事の遅延や資材価格高騰などにリアルタイムで対処しやすくなり、作業効率が悪い業務を容易に発見できます。まずは、すべてのリスクを洗い出し、原因を把握することから始めましょう。

<ここまでのポイント>
・デジタル化によってリスクが可視化されると問題発見と対処が容易になる。
・すべてのリスクを洗い出し、原因を把握することから始めるべき。

2年後、3年後はどうなる?受注と収益の減少

 建設業の経営層向けに2024年問題の影響などをアンケート調査では、今後ますます経営が厳しくなると予想する声が寄せられていました。2年後、3年後の受注と収益について考えてみましょう。

参考記事:建設業の2024年問題、制度だけではダメ?残業削減対策の効果と解決策

(1)物価高による利幅の減少

 ウクライナ危機から始まった原油高や円安の影響を強く受け、資材価格の高騰が続いています。2024年問題による人手不足がそこに拍車をかけ、資材費や人件費の上昇が利益率を圧迫しています。物価甲とは今後も続くと予想され、2年後、3年後にはさらなるコストの増大も懸念されます。資材価格が上がった分、業務の効率化でそれ以外のコスト削減への取り組みが必要です。

参考記事:建設資材の高騰にどう対処する?DXによる収益アップの取組み

(2)懸念される工事件数の減少

 少子高齢化や人口減少に伴い、新規建設の需要が減少していくと予想されています。言うまでもなく、着工件数の減少は直接的に売上に影響しますので、仕事を勝ちとる競争力を高めつつ、新たな収益源の確保や既存事業の生産性向上に取り組む必要があります。デジタル技術の活用で、既存サービスの付加価値、新しいサービスを開発できる可能性があります。

(3)働き方改革、人手不足による受注件数の減少

 設備業でも、2024年問題や採用難による人手不足で仕事を受注できないケースも増えているようです。若手人材の採用・定着に苦労している会社も多く、従業員の高齢化が進んでいます。労働力が減少する中で、これまでと同等の収益性を維持するには抜本的な業務効率化が不可欠です。デジタル化がこの課題への対策として期待されています。

<ここまでのポイント>
・物価高で利幅が減少する分、それ以外のコスト削減への取り組みが必要。
・競争力を高めつつ、新たな収益源の確保や既存事業の生産性向上への取り組みが必要。
・労働力が減しても収益性を維持す抜本的な業務効率化が不可欠。

会社を存続させるために必要なことは?

 長期的な視点でみれば、人口減少の影響で建設需要と労働力の供給の両方が減少していくわけですから、どこかのタイミングで帳尻があうと考えられます。しかし、あくまでも長いスパンでの話で、経営環境としては厳しく、人手不足で受注ができない黒字倒産のリスクすらあります。需要と共有のバランスをとりつつ、会社を存続させるために必要なことを考えてみましょう。

(1)会社を存続させるための戦略

人口減少に向けて生き残っていくためには、少人数で業務をまわせる体制づくりが鍵となるでしょう。そのために必要なのが従業員の役割に垣根を設けず、柔軟に業務を分担できる組織と仕事環境です。具体的には、業務の標準化と手順の明確化による「業務の流動化」が求められます。

 そして、受注件数の減少に備えて、1件あたりの収益性を高める必要があります。少ない受注件数でより多くの収益を確保できる事業、すなわち高付加価値サービスの提供や価格競争なしで受注できる長期的な顧客関係の構築が重要です。新規建設とは別軸で定期的な収入を確保できるサービス、社会のニーズに合わせた新サービス開発などが有効な戦略となるでしょう。

参考記事:【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制③DXによる業務の流動化で生産性向上!

(2)デジタル化で実現する中小企業の生存戦略

 前述の「少人数で業務をまわせる体制」において、デジタル化は強力なツールです。たとえば、拾い出しから積算見積、工事原価管理から請求までを一気通貫で管理する業務システムや、モバイルデバイスやクラウドサービスの活用で現場と事務所間のリアルタイムな情報共有が可能になり、業務全体の効率化や意思決定のスピード感がアップします。

 新たなサービスの開発でもデジタル技術が貢献します。たとえば、AIとセンサーを活用した設備の異常検知システムや遠隔保守サポートなど、顧客の利便性や価値を高める付加価値の高いサービスを開発できれば、「少ない受注件数で多くの収益を確保できる事業」に発展する可能性があります。

参考記事:【2024年問題】デジタル化による施工管理者不足対策と助成金活用

<ここまでのポイント>
・人口減少社会の生存戦略は「少人数で業務をまわせる体制」と「少ない受注件数で多くの収益を確保できる事業」
・生存戦略の実現にはデジタル化が最適。

設備業のリスクと収益の伸び悩みは表裏一体

 会社経営はリスク管理と課題解決の連続です。そして、設備業にかぎらず、収益の減少は会社の存続を脅かす最大のリスクです。リスク解消に必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ)を確保するためには、収益の確保が前提です。収益の伸び悩みがリスク解消のための打ち手の選択肢を狭め、さらによくない状況を作り出すトリガーになります。

 人手不足の問題を例に考えてみると、当面の課題である人手不足に対処する「対症療法」と最終的な課題である収益構造から見直す「根治療法」のどちらを選択するかは経営者の判断によります。しかし、中小企業が社会課題である少子高齢化に抗うには大きなコストがかかり、それ自体がリスクになります。一方、受注が減少しても収益があがる構造にシフトすれば、人手不足という難易度の高い課題の影響を小さくすることができます。

 デジタル化は、対症療法と根治療法のどちらにも効果を期待できます。デジタル化によるリスクの管理と解消への取り組みが経営基盤の強靭化と事業の持続可能性につながります。

参考記事:中小企業はデジタル化で成長する!失敗事例と活用例を紹介

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