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 少子高齢化の社会問題として懸念されていた後継者不在による廃業が前年比で低下したそうです。オーナー経営者から親族以外への後継者への事業承継が増加しているそうです。今後ますます事業承継やM&Aの需要が高まっていくでしょう。
その一方で、承継後に経営不振に陥る中小企業も少なくありません。円滑な事業承継やM&Aを実現するためのポイントとデジタル化の貢献について解説します。

目次
-設備業でも増えている後継者難の廃業
(1)統計調査でみる後継者難による廃業
(2)設備業界の事業承継の動向
-事業承継後に起こるトラブル
(1)経営状態の全貌を把握しきれない
(2)過去の仕事の記録が残っていない
(3)事業承継後の経営不振
(4)設備業のM&Aで注意すべきポイント
-円滑な事業承継や有利なM&Aを実現するデジタル化
(1)事業承継やM&Aを行う際に注意すべきポイント
(2)デジタル化で有利になるポイント
-事業承継、M&Aを考えるならデジタル化はマスト!

設備業でも増えている後継者難による廃業

(1)統計調査でみる後継者難による廃業

 「後継者不在率」動向調査(2023年12月、帝国データバンク)によると、全国の後継者不在率は53.9%となり、前年から3.3ポイント低下しました。調査開始以来、過去最低の数値だそうです。親族以外の「内部昇格」が初めてトップになり、事業承継の脱ファミリーが加速しています。一方、全体の1.5%、実数にして約2000社が「計画中止・とりやめ」となっており、事業承継がとん挫したと考えられます。

 また、2023年1月~11月で、500件以上の後継者不在による「後継者難倒産」が報告されています。経営者の高齢化と後継者不足のリスクは、依然として高いと言えます。だからこそ、経営者が健康不安を感じる前に、事業承継を円滑に進めるための施策に取り組む必要があります。

出典:「後継者難倒産」動向調査(帝国データバンク)

出典:全国「後継者不在率」動向調査(2023年)(帝国データバンク)

(2)設備業界の事業承継の動向

 建設業全体の許認可保有業者数は長期的な減少傾向にありましたが、令和4年度に増加に転じました。業界動向としては新築住宅の需要が減少する一方、リフォーム・リノベーションの需要が高まり、大手・中堅の企業が総合的なサービスを展開する動きがみられます。サービス拡充にともない、設備機器販売から取付工事まで自社内で対応する体制をめざす会社も多いようです。

 そうした背景から、経営者の高齢化や後継者不在に直面した中小規模の事業者が、事業を広げようとする大手・中堅の会社に事業売却する構図ができつつあります。今後は、後継者難の設備業者が、協力業者として取引していた元請け会社に買収されるなどのケースも増えるのではないでしょうか。

<ここまでのポイント>
・後継者不在率は改善したが、2023年の後継者難倒産は11月までに500件超。
・経営者が健康不安を感じる前に事業承継を円滑に進めるための施策に取り組むべき。
・総合的なサービスをめざす大手・中堅に後継者難の設備業者の事業売却の増加も。

事業承継後に起こるトラブル

 前章の統計でも事業承継の中止が多いという結果が出ていますが、承継後にトラブルが起こるケースもあります。事業承継後に起こりがちなトラブルの例をあげてみます。

(1)経営状態の全貌を把握しきれない

 事業承継後、後継者が経営状態の全貌を把握するのに苦労するケースが多いようです。デジタル化されていない会社に起こりがちなトラブルです。財務状況や取引先との関係性の記録や業務プロセスや従業員の役割などが明確に定義されておらず、前経営者の記憶や関係者の認識だけで仕事がまわっている状態です。これらの情報が適切に引き継がれないと、新経営者は的確な経営判断を下せないため、最悪の場合、業績に影響するリスクもあります。

(2)過去の仕事の記録が残っていない

 ご存じの通り、設備業では過去に行った工事や修理の詳細な記録は貴重な経営資源です。これらの情報が適切に管理されていないと、仕事のノウハウや営業情報として活かせなくなります。紙の資料でも活用はできますが、分類・整理されていないと記憶を頼りに探すことになり、結局は山のような資料を活用しきれなくなるケースが多いです。

(3)事業承継後の経営不振

 新経営者が事業の実態を充分に把握できていないと経営環境の変化に適応できず、経営不振に陥るケースがあります。従業員とのコミュニケーション不足や取引先との関係性の変化も経営不振の要因になります。特に取引先との関係性が前経営者の人間関係に依存している場合などは要注意です。

(4)設備業のM&Aで注意すべきポイント

①建設業許可の人的要件を踏まえた準備
建設業の事業を継続するには、事業承継後も建設業許可の人的要件を充足している必要があります。事業承継の前後は、どうしても離職者が出やすくなるため要注意です。

②後継者の育成
事業承継後の経営は後継者にかかっています。親族や役員・従業が後継者となる場合はできるだけ時間をかけて育成を進めるのが望ましいです。事業や業務に関する知識はあっても、経営者としての教育と引継は必要不可欠です。外部から後継者を招へいする場合、設備業の実務や経営の経験がある人でも会社の文化や価値観を理解しないと、従業員との間に溝が生じる可能性があります。

③従業員・取引先などへの報告
従業員や取引先への説明はとても重要です。伝え方やタイミングを見誤ると、事業承継による不安や不満を持った従業員が離職したり、取引先から契約を解除されたりするリスクがあります。

<ここまでのポイント>
・新経営者が経営や事業の実態を把握できないとトラブルが起こりやすい。
・事業承継後に経営不振に陥ることもある。

円滑な事業承継や有利なM&Aを実現するデジタル化

(1)事業承継やM&Aを行う際に注意すべきポイント

 事業承継やM&Aは長期的な視点で取り組むべき課題ですから、早い段階から準備を始め、計画的に進めることが重要です。いずれにしても、税務、法務、財務での手続きが必要になります。事業承継やM&Aの経験がない税理士では対応できない場合もあります。顧問税理士に相談の上、必要に応じて外部の専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。

 まずは財務状況を明確にし、問題点があれば改善しなければなりません。特にM&Aを検討している場合には必須です。こうした対処にはデジタル化で経営状況を透明化することが効果的です。同時に事業の競争力を高め、企業価値を向上させることは、事業承継やM&Aを有利に進めるために不可欠です。

 また、事業承継後の経営不振を避けるために後継者や後継者を支える人材を育成し、経営者が交代してもしばらくは売上が下がらないよう、事業構造を強化しておく必要があります。経営者のリタイアに伴う事業承継を検討する場合は、これらの事業承継後を見据えた準備ができるよう、経営者の気力、体力が充実しているうちに着手するのが望ましいでしょう。

(2)デジタル化で有利になるポイント

 デジタル化によって事業承継やM&Aは有利になります。デジタル化がもたらす有利なポイントを解説します。

 デジタル化は業務の効率化だけでなく、経営状態や実績を一元的な管理を実現します。事業承継やM&Aを行う際、経営状況や事業の実態を正確かつ迅速に把握できれば、企業の強みや課題を明確にすることができます。リアルタイムで経営情報を把握できるようになると、経営者は迅速かつ的確な意思決定を行うことが可能になります。特に、事業承継後の新経営者にとって重要なポイントです。日々の売上や利益の推移、工事の状況、人員の稼働率などをリアルタイムで把握できれば、スピーディーに対応できるようになります。

 また、M&Aにおいては企業価値を向上し、評価を高める効果を期待できます。買収側の企業にとって、買収する企業の業務がデジタル化されているメリットは大きいです。企業の経営状態が透明化され、デューデリジェンス(企業価値評価)がスムーズに行えるため、買収の意思決定がスムーズになります。また、買収後の経営統合もかなり容易になります。

<ここまでのポイント>
・早い段階から準備を始め、計画的に進めることが重要。
・デジタル化で経営状況を透明化することが効果的。
・デジタル化によって事業承継やM&Aが有利になる。

事業承継、M&Aを考えるならデジタル化はマスト!

 事業承継後は経営が不安定になりやすく、経営不振に陥る企業も少なくありません。これは新経営者が事業の実態を把握できていないことや急激な変化に適応できないことが主な原因です。たとえば、親世代の経営者が変化を避けてデジタル化の取り組みを先送りすると、子世代の後継者が苦労することになります。

 事業承継前にデジタル化を進めておくことで、承継後の不安定な時期を乗り越えやすくなります。新旧経営者間の情報共有が円滑になり、後継者はスムーズに意思決定が行えるため、事業承継のリスクを減らすことができます。デジタル化で業務プロセスが明確になっていれば、従業員も安心して仕事に取り組むことができます。

 経営情報や業務の実績がデジタルデータ一元管理されていれば、経営者として積み重ねてきた経営資源やノウハウをもれなく次世代に引き継げます。デジタル化によって、経営の継続性を保ちやすくなるのです。

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