あらゆる業種・業界でデジタル化が急速に進んでいます。建設業・設備業も例外ではありませんが、中小企業にはコストや人材不足のハードルがあり、DX・デジタル化が浸透するには時間がかかりそうです。しかし、工事管理の効率化と生産性向上を実現すれば、従業員を増やさなくても収益を維持・向上させることができます。クラウドとモバイルの活用がもたらす変革と具体的な活用例、そしてその効果について解説します。
目次
-クラウドとモバイルの活用で変わる現場作業
(1)リアルタイムの情報共有
(2)リモートでの技術指導
(3)モバイル機器を使った施工状況の確認、品質管理
(4)クラウドベースの資材管理
(5)モバイル対応の安全管理
(6)作業日報など現場記録
(7)現場状況の可視化
-工事管理のデジタル化によるメリット
(1)適切な原価管理によるコスト削減
(2)データ連携による業務の効率化
(3)現場業務における情報共有
(4)業務全体の生産性向上
-生産性を高めるデジタル活用の事例
(1)【設備業全般】拾い出し~積算見積~工事原価管理~作業日報
(2)【消防設備】点検スケジュールと作業日報
-デジタル化がもたらす設備業の生産性向上
クラウドとモバイルの活用で変わる現場作業
国土交通省が推進する建設業DXにならい、建設業では業務のデジタル化が拡がりをみせています。設備業でも、デジタル化による生産性向上の取組みが進んでいます。特にクラウドとモバイルの活用は、工事管理のあり方を大きく変え、生産性向上はもちろん、品質管理と安全性の向上を期待できます。クラウドとモバイルの具体的な活用例を紹介します。
(1)リアルタイムの情報共有
建設業界向けのクラウドベースのプラットフォームはかなり充実しています。現場と事務所、さらには協力会社との間でリアルタイムの情報共有が可能になります。図面の更新、作業指示の変更、進捗状況の報告などを即座に共有できます。コミュニケーションの齟齬を減らし、作業効率が大幅に向上します。
(2)リモートでの技術指導
モバイル端末のビデオ通話機能の活用で、離れた場所からでも技術指導ができるようになりました。写真や動画を利用して事務所や在宅でも的確な指示を出せるので、より多くの現場をサポートでき、高齢の熟練技術者の能力活用にもつながります。
(3)モバイル機器を使った施工状況の確認、品質管理
タブレットやスマートフォンのカメラ機能で、現場の施工状況をリアルタイムで共有できます。写真や動画によって細部まで把握できるので、より精度の高い品質管理を実現できます。たとえば、配管や配線の記録写真や動画をクラウド上で共有することで、リアルタイムで関係者全員が最新の状況を把握できます。
(4)クラウドベースの資材管理
資材在庫を正確に把握するのは煩雑な作業で、原価のムダやムラの原因になっています。クラウド上で資材の在庫を一元管理し、モバイル端末を使って現場から直接発注や在庫を確認できれば、無駄な発注や在庫切れを防ぐことができます。資材調達の効率が向上します。
(5)モバイル対応の安全管理
安全管理のチェックリストや報告フローをデジタル化し、モバイル端末で入力することで安全管理の状況を関係者が把握できます。万が一の事故発生時や危険箇所の報告もリアルタイムで行えるため、迅速な対応が可能になり、安全管理の効率と確実性が向上します。
(6)作業日報など現場記録
作業日報をデジタル化することで正確性が向上し、客観的な勤務時間の記録として認められます。データの集計や分析も容易になり、現場ごとの労務時間を可視化できるツールもあります。工事原価管理や作業効率の改善につなげられます。
(7)現場状況の可視化
クラウドとモバイルの活用で、現場の状況をより詳しく可視化することができます。3Dスキャナーによる設計段階での干渉チェックやセンサーを搭載したドローンによる工事の進捗管理などが注目されています。
<ここまでのポイント>
・クラウドとモバイルの活用で工事管理の生産性、品質管理と安全性の向上を期待できる。
・現場と事務所、関係先とのリアルタイムの情報共有で生産性とサービス品質が向上する。
工事管理のデジタル化によるメリット
現場作業はデジタル化ができないため、設備業の現場ではデジタル化のメリットが少ないと考えている人がいるようです。しかし、工事管理をデジタル化することで、現場での働きやすさや効率がアップします。工事管理のデジタル化によるメリットを解説します。
(1)適切な原価管理によるコスト削減
現場の状況次第で労務時間が膨らんだり、追加の資材が発生したりするのはよくあることです。工事原価の管理システムを使用することでリアルタイムに工事原価を把握し、無駄な支出の削減や発注者との交渉など、収益を確保するアクションがとりやすくなります。
(2)データ連携による業務の効率化
積算見積、受発注、工事管理、工事原価、請求、入金管理などの各プロセスのデータを連携させることで、重複入力の削減やケアレスミスの防止、事務処理の時間を短縮できます。部門間で同一データをみることで作業効率が大幅に向上し、生産性の向上につながります。
(3)現場業務における情報共有
クラウドとモバイルの活用により現場と事務所、協力会社との間でリアルタイムの情報共有が可能になります。情報の行き違いやコミュニケーションの齟齬を解消できるほか、意思決定のスピードが向上し、問題が発生した際もスピーディーに対処できるようになります。
(4)業務全体の生産性向上
データ連携により作業の無駄を削減し、効率よく業務を進められるようになります。また、蓄積したデータを分析することで、業務のボトルネックや改善のポイントを見つけやすくなります。
参考記事:設備業のDXは低予算、スモールスタートで成功させる!
<ここまでのポイント>
・工事管理をデジタル化することで、現場の働きやすさや効率がアップする。
・蓄積したデータの分析で、業務のボトルネックを見つけやすくなる。
生産性を高めるデジタル活用の事例
設備業におけるクラウドとモバイルの活用例を紹介します。
(1)【設備業全般】拾い出し~積算見積~工事原価管理~作業日報
材料拾い出しから作業日報まで一連のプロセスをシームレスに連携させることができます。作業の効率化と正確な原価管理が可能になり、収益確保につながります。
①CADデータから自動的に数量を拾い出し
②拾い出しデータを元に積算見積
③見積データを元に実行予算を作成
④資材などの原価を入力し、管理
⑤現場に入った従業員の作業日報から労務時間を集計
製品紹介:[三の丸EXv2]設備業向け工事積算見積・原価管理総合システム
(2)【消防設備】点検スケジュールと作業日報
点検スケジュール作成は人員配置や日程調整が多く、非常に煩雑な作業です。また、台帳管理の不備でスケジュールや請求もれが起こりがちです。作業担当者にとっても、報告書作成作業が負担になっています。これらの悩みや負担をデジタル化で解消できます。
①設備点検のスケジュールと人員配置の作成
②点検スケジュールの通知(顧客、点検担当者、協力会社)
③現場から点検結果の入力→システム上で点検報告書作成、顧客への報告に連携
④請求書発行、改修見積の作成など
製品紹介:[PlannerEX]建物台帳管理・スケジュール作成システム
製品紹介:[Writeレス]予定登録・作業日報・勤怠管理システム
参考記事:【5分でわかる】消防設備の業界動向から見る課題と事業存続の鍵はDX
<ここまでのポイント>
・材料拾い出しから工事管理まで一気通貫で連携し、収益確保につなげます。
・消防点検の業務管理者と点検担当者の悩みを同時に解決します。
デジタル化がもたらす設備業の生産性向上
クラウドとモバイル活用により、発注者や協力業者、オフィスと現場の情報管理を一元化でき、あらゆる情報をリアルタイムで共有し、迅速な意思決定や柔軟な対応が可能になります。作業の効率化はもちろん、品質管理や安全管理の水準を向上させることができます。
建設業・設備業におけるDXのゴールは単なるIT技術の導入ではなく、建設現場をとりまく業務プロセスそのものの変革することが目標です。たとえば、CADやBIMによって紙の図面をデジタル化することで、設計から積算見積、施工、維持管理の各プロセスで一貫したデータ活用ができます。
一方、社内では経営者、現場管理者、従業員から協力会社まで、関係者全員の理解と協力が不可欠です。新しい手順やシステムに抵抗感を持つ従業員がボトルネックになっている会社もあります。中小規模の設備業がクラウドとモバイルの活用をめざすなら、導入費用や作業負荷を少なく抑えられるスモールDXが適しています。ITに苦手意識を持つ従業員にデジタル化のゴールや期待される効果を丁寧に説明するなど、抵抗感を解消する取り組みも必要です。