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  4. 設備業の収益性向上!利益率アップのカギとなる積算見積と原価管理

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企業経営でもっとも重要なのは収益の確保です。人手不足や資材価格の高騰など、利益を圧迫する材料が多い中で、中小規模の設備業者が利益率を向上させるための戦略について解説します。設備業の収益性を高めるためには、積算見積の精度アップと適切な原価管理が不可欠です。利益率アップと業務効率化を実現する施策を紹介します。

目次
-利益を最大化するための原価管理と積算見積の重要性
(1)設備業の利益率ってどれくらい?
(2)設備業の利益に関する課題
(3)原価管理と積算見積が利益率に与える影響
-利益率アップの原則①精度の高い見積もりで競争力を高める
-利益率アップの原則②原価の見える化
-利益率アップの原則③業務の流動化で残業削減
-利益率アップへの道は積算見積と原価管理で開ける

利益を最大化するための原価管理と積算見積の重要性

(1)設備業の利益率ってどれくらい?

 設備業の利益率は平均3〜5%程度で推移していますが、10%以上の利益率を達成している会社も存在するようです。業態や規模によっても大きく異なり、規模の大きさと利益率の高さは比例する傾向にあります。また、設備業界でも原材料費の高騰や人件費の上昇に利益を圧迫され、収益低下に悩まれる会社が多いです。

 こうした統計にはあらわれませんが、同じ社会環境においても利益率を維持・向上させている企業も少数ではありますが存在します。これらの企業は、積極的な原価管理と精度の高い積算見積を実践しているケースが多いです。

設備工事業 令和2年度 令和3年度 令和4年度
売上高経常利益率(%) 4.57 4.00 3.18
売上高総利益率(%) 29.51 29.58 29.46
技術職員 1 人当たり完工高(千円) 35,238 34,796 34,555

※設備工事業の対象業種:電気工事、管工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、 さく井工事、消防施設工事、清掃施設工事

出典:「建設業の経営分析(令和4年度)概要版」(一般財団法人 建設業情報管理センター)

(2)設備業の利益に関する課題

昨今、設備業の利益が伸びやむ原因として考えられるのは、以下の3点です。

・着工件数に減少による価格競争の激化
・人手不足による人件費の上昇
・原価管理の不徹底

 ひとつめは、着工件数の減少の影響です。国土交通省「住宅着工統計」によると、2023年の注文住宅の着工件数は64年ぶりの低水準となっており、その反動もあってか2024年4月の調査では、貸家と分譲住宅を中心に前年比13.9%と増加していますが、少子高齢化による需要縮小を背景に長期的な減少傾向にあると言われています。改修やリフォームの増加傾向はみられても、着工件数の減少が価格競争の激化につながっていると考えられ、利益を圧迫する要因となっている可能性があります。また、大規模プロジェクトでの低価格入札も常態化しており、利益率の低下につながっていると考えられます。
次に考えられるのは人件費の上昇です。社会全体で深刻な人手不足が続いており、建設業・設備業は特に顕著な影響を受けている業種のひとつと言えます。職人を確保するため給与水準や外注費を引き上げざるを得ないため、利益率を圧迫する要因となっています。人手不足が改善する見通しは立っていないため、少ない人数で収益を確保する施策を考える必要があります。

 3つめは、要因であると同時に問題解決の糸口とも考えられる「原価管理の不徹底」です。中小規模の設備業者では適切な原価管理を行っておらず、利益が受注時の想定を下回るケースが見られます。さらに深刻な場合は、見積の時点で赤字になっている場合もあるようです。逆に言えば、適切な原価管理を行うことで収益性が向上する可能性があります。

出典:今月のグラフ(2024年3月)64年ぶりの歴史的な低水準となった注文住宅の新設着工 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

(3)原価管理と積算見積が利益率に与える影響

 設備業は見積時の不確定要素が多く、現場の状況で内容を変更される場合があり、現場の状況に対応しつつ収益を確保するには、精度の高い見積と適切な原価管理が必要です。原価管理の徹底により、無駄な支出を抑え、利益率の向上につながります。また、精度の高い積算見積を行うことで、受注時にしっかり利益を確保できるようになります。

参考記事:【建設業の見積】担当者ごとの見積格差を解決して利益率アップを!

<ここまでのポイント>
・設備業の利益率は平均3〜5%程度、10%以上の利益率の会社もある。
・設備業が収益を確保するには、精度の高い見積と適切な原価管理が必要。

利益率アップの原則①精度の高い見積もりで競争力を高める

 具体的な利益率アップの方法について考えてみましょう。精度の高い見積もりは、利益確保と同時に受注時の競争力を高める上でも重要です。適正な利益を確保しつつ、競合他社との価格競争にも対応できるようになります。 見積データを元に実行予算を作成すると、価格交渉のガイドラインとして使用できます。実行予算を基準にどこまで値下げできるかを検討でき、利益を確保したうえで価格交渉ができます。発注者と交渉する際も利幅が明確になっているため、スピーディに意思決定ができます。

参考記事:建設業、設備業の見積作成の効率化と競合する際の対応
参考記事:実行予算とは、組み方と活用方法、工事管理で注意すべきポイント

<ここまでのポイント>
・精度の高い見積もりは利益確保と競争力を高める。
・見積もり時の実行予算を、価格交渉のガイドラインとして使用できる。
・発注者との価格交渉において迅速に対応できる。

利益率アップの原則②原価の見える化

 工事の進行に伴う原価の発生状況をリアルタイムで把握する「原価の見える化」によって、赤字工事を未然に防げるようになります。「原価の見える化」こそ、利益率アップにおいて重要な役割を果たします。

 まず、原価の見える化によって原価の上昇や予算オーバーを早期に発見し、対策を講じやすくなります。会社全体で工事原価を共有することで従業員のコスト意識を高められ、コスト削減への取組みなど、現場レベルでの効果も期待できます。経営サイドでは、工事ごとの利益状況をリアルタイムに把握できるため、経営判断のスピードが向上し、蓄積した原価管理データを工事管理の改善や見積の精度向上に活用できます。原価の見える化を実現するためのステップを解説します。

<原価の見える化と活用のステップ>

①原価項目の明確化
材料費、労務費、外注費など、原価を構成する項目を定義します。

②原価管理の仕組みづくり
工事ごとに原価項目の実績(作業実績、材料使用量など)を集計します。Excelでも可能ですが、複雑な表作成と煩雑な入力作業が必要です。効率よく、適切に原価管理を行うためには、原価の発生状況をリアルタイムで可視化できる、工事原価管理システムの導入をお奨めします。

③定期なレビューと対策の流れ
原価管理システムを導入しても、原価を把握して対策につなげられなければ、導入した意味がありません。定期的に原価の状況をチェックし、予算との乖離を早期発見、対策する流れを確立させましょう。

参考記事:【建設業の原価管理】工事原価を簡単に管理する方法
参考記事:建設業の物価高倒産が急増!建設物価を活用して赤字受注を回避する方法

<ここまでのポイント>
・原価の見える化によって原価の上昇や予算オーバーを早期に発見できる。
・工事原価を共有することで従業員のコスト意識を高められる。
・利益状況をリアルタイムに把握でき、経営判断のスピード向上。

利益率アップの原則③業務の流動化で残業削減

 2024年4月の時間外労働上限規制は、建設業にとって重要な課題です。時間外労働上限規制への対応は義務であると同時に、残業代の削減や業務効率化によるコスト削減効果を期待できます。従業員にとっての働きやすさや満足度が向上する可能性があります。

 部署や職種による固定的な業務分担にとらわれず、柔軟に業務を割り当てる「業務の流動化」によって、従業員を増やさずに人手不足の影響を最小限に抑えられます。また、業務の効率化や標準化によって慢性的な残業を解消できる可能性があります。

<業務の流動化とデジタル活用のステップ>

①業務の棚卸し
従来の作業手順を見直し、無駄な工程や重複作業を洗い出します。そのうえで工程や手順の要不要を判断し、必要に応じて手順の変更や統合を行います。標準化できる作業は手順書を作成し、特定の担当者以外でも効率的に業務を遂行できるようにします。

参考記事:【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制②業務の棚卸ししと適性化による残業削減
参考記事:【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制③DXによる業務の流動化で生産性向上!
参考記事:【7分でわかる】DXが失敗する原因と成功の鍵となる「業務の棚卸し」

②業務分担の見直し
業務量や繁忙期・閑散期などを考慮して業務分担を見直します。すると、特定の部署や個人に業務が集中しなくなり、社内のマンパワーを有効活用できます。

参考記事:施工管理者の業務はもっと効率化できる!施工管理の業務棚卸し

③デジタル活用による標準化と情報共有
デジタル化によって業務プロセスの効率化と自動化を実現できます。データの一元管理やリアルタイムの情報共有ができるようになり、柔軟な業務分担が容易になります。また、クラウド環境とタブレットやスマートフォンの活用で、現場と事務所のコミュニケーションが円滑化になるほか、現場からの直行直帰や在宅ワークで移動時間の無駄を削減できます。

参考記事:中小企業はデジタル化で成長する!失敗事例と活用例を紹介
参考記事:建設資材の高騰にどう対処する?DXによる収益アップの取組み

<ここまでのポイント>
・残業削減で業務効率化によるコスト削減と従業員の満足度向上も。
・業務の流動化で特定の部署や個人に業務が集中しなくなる。
・デジタル化によって業務プロセスの効率化と自動化を実現できる。

利益率アップへの道は積算見積と原価管理で開ける

 設備業の利益率アップのための原則を解説しました。まず、積算見積の精度向上によって、受注時点での利益確保が可能となります。適切な見積もりと実行予算の活用で無理な値引きを避け、利益を確保した内容で受注できるようになります。

 そして、工事原価管理の徹底により、見積で確保した利益を最大化できます。「原価の見える化」によって原価の発生状況を把握することで着工後のコスト増大を防ぎ、利益を確保します。さらに、DX・デジタル活用による業務効率化と業務の流動化による生産性の向上も、利益率アップに貢献するでしょう。人手不足・採用難への対策としても有効な施策です。

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デジタル化で解決できる?設備業のリスクと収益の伸び悩み

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