
2025年2月28日付で、中小企業省力化投資補助金が改正されました。新設の一般型では、オーダーメイド形式の設備投資が対象となります。
1次公募の期限は2025年3月末とかなり短期間ですが、すでに検討が進んでいる会社にはビッグチャンスと言えます。中小企業省力化投資補助金について、改正内容から補助対象となる製品のポイントまで、徹底解説します。
目次
-中小企業省力化投資補助金が大幅改正!
・中小企業省力化投資補助金とは
・いつから?公募スケジュールと申請に必要なもの
-カタログ以外の製品も補助対象に!改正ポイントを徹底解説
変更点①:予算規模の拡大
変更点②:申請枠の拡充(一般型の新設)
変更点③:対象事業者の拡大
変更点④:補助対象の拡大
変更点⑤:補助上限額の引き上げ
変更点⑥:申請方法の変更
変更点⑦:事業実施後の効果報告の簡素化
変更点⑧:保険加入の必須化
-中小企業省力化投資補助金の補助対象となる製品の要件
-自社の課題解決によりそった省力化投資が可能に!
中小企業省力化投資補助金が大幅改正!
中小企業省力化投資補助金は、中小企業が業務の省力化の取り組みを支援する事業で、DXやIoT、ロボットなどを導入する際の経費の一部を補助する制度です。令和6年度の補正予算で大幅な改正が行われ、設備やシステムをカスタマイズして導入した場合の経費まで補助対象になりました。
中小企業省力化投資補助金とは
中小企業省力化投資補助金の概要を抜粋して記載します。詳細は公募要領などでご確認ください。
改正前は、事前に登録された製品カタログから選択して、ツールや設備を導入する「カタログ注文型」として運用されていました。今回の改正で、導入する設備やツールを自由に選択できる「一般型」が導入され、自社の現状に合わせてカスタマイズした設備の導入やシステム構築が補助対象になりました。
事業の目的 | 業務プロセスの自動化・高度化やロボット生産プロセスの改善、デジタルトランスフォーメーション(DX)等、中小企業等の個別の現場の設備や事業内容等に合わせた設備導入・システム構築等の多様な省力化投資を促進する。 | ||
対象事業者 | 生産・業務プロセス、サービス提供方法の省力化を行う者 中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人 | ||
補助対象と対象経費 | 業務の省力化、自動化を実現する機械設備、ITシステムの導入などに関する費用の一部が補助対象となります。 | ||
機械装置・システム構築費 | ① 機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 ② 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費 ③ 改良又は据付けに要する経費 ※生産性向上に必要な防災性能の優れた生産設備等も可。 ※単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要。 | ||
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 | ||
技術導入費 | 知的財産権等の導入に要する経費 | ||
知的財産権等関連経費 | 特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等 | ||
外注費 | 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 | ||
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 | ||
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 | ||
補助率と補助上限額 | カタログ 注文型 | 補助率 | 1/2 |
補助上限額 | 5人以下:200万円(300万円) 6~20人:500万円(750万円) 21人以上:1,000万円(1,500万円) | ||
一般型 | 補助率 | 中小企業:1/2、小規模・再生事業者:2/3 | |
補助上限額 | 5人以下:750万円(1,000万円) 6~20人:1,500万円(2,000万円) 21~50人:3,000万円(4,000万円) 51~100人:5,000万円(6,500万円) 101人以上:8,000万円(1億円) ※補助額1,500万円までは1/2もしくは2/3、 1,500万円を超える部分は1/3 ※最低賃金引上げ特例(中小企業のみ):補助率を2/3に引き上げ | ||
大幅賃上げ特例 | |||
以下の2項目を満たす場合、補助上限額に上乗せされます。 上記カッコ内の 金額が特例適用後の上限額となっています。 最低賃金引上げ特例事業者、各申請枠の上限額に達していない場合は除きます。 ① 給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加 ② 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準 ※いずれか一方でも未達の場合は、各申請枠の従業員規模区分別の補助上限額との差額の返還を求められます。 | |||
審査基準 | 申請時に提出する計画書や事業計画書などを以下の観点で審査されます。 ・生産性向上の効果 ・経済的効果 ・事業計画の実現可能性 など | ||
基本要件 | 申請する事業者は、以下の要件を満たしていることが求められます。最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、 基本要件は①、②、④のみで可です。 ① 労働生産性の年平均成長率が+4.0%以上増加していること ② 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が以下のいずれかを満たしている ・事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上 ・給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加している ③ 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準であること ④ (従業員21名以上の場合)次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表すること | ||
その他の要件 | ① 補助事業者の業務領域・導入環境において、当該事業計画により業務量が削減される割合を示す省力化効果が見込まれる事業計画を策定すること。 ② 事業計画上の投資回収期間を根拠資料とともに提出すること。 ③3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して付加価値額が増加する事業計画を策定すること。 ④人手不足の解消に向けて、オーダーメイド設備等の導入等を行う事業計画を策定すること。 ※カタログ注文型の製品カタログに登録されているカテゴリに該当する製品について、本事業で導入する場合は審査の際に考慮します。 | ||
申請の流れ | ① 応募申請の決まりや手順を確認する。 ◆詳細はこちら:一般型|中小企業省力化投資補助金 ② 申請書類を作成する。 ◆応募申請時に提出が必要な様式 指定様式:役員名簿、株主・出資者名簿、事業実施場所リスト、最低賃金引き上げに係る要件確認書、他の助成制度の利用実績確認書、金融機関確認書、労働者名簿 参考様式:大幅な賃上げに取り組むための事業計画書 ◆事業計画策定に関する書類 参考資料:事業計画書作成の参考ガイド、事業計画書(その1、その2)、 指定様式:事業計画書(その3) ③ GビズIDから申請する。 | ||
報告義務 | 事業実施後、効果報告書を提出(3回) |
出典:https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/shoryokuka_leaflet_ippan.pdf
いつから?公募スケジュールと申請に必要なもの
中小企業省力化投資補助金の一次公募のスケジュールが発表されました。年3~4回の公募が予定されており、今後のスケジュールは随時発表されます。
尚、中小企業省力化投資補助金の申請には「GビズIDプライムアカウント」が必要です。同じGビズIDでも、「メンバー」「エントリー」のアカウントでは申請ができません。「プライム」アカウントであるかを確認しましょう。ID取得には時間がかかりますので、取得していない場合は先に準備することをお勧めします。
申請システム受付開始 | 1次公募:2025年3月19日 10:00 |
公募の締切 | 1次公募:2025年3月31日 17:00 |
採択発表日 | 1次公募:2025年6月中旬(予定) |
事業実施期間 | 交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内) |
出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)の第1回公募要領を公開しました | 中小企業庁
◆申請から交付の流れ

<ここまでのポイント>
・カタログ以外の設備やシステム構築の経費まで補助対象となり、上限額も引上げ。
・1次公募の締切は2025年3月31日。今後3~4回の公募がある見通し。
製品カタログ以外も補助対象に!利用しやすくなった改正ポイントを解説
前述の概要から、中小企業省力化投資補助金の変更点をピックアップして解説します。
変更点①:予算規模の拡大
予算規模が3000億円に拡大されました。一般型の補助上限額は最大1億円となっており、大規模な投資を支援する内容になっています。
変更点②:申請枠の拡充(一般型の新設)
新設された「一般型」では、業務プロセスの自動化やロボット生産プロセスの改善、DX など、個別の経営課題に合わせた設備導入やシステム構築を支援します。従来の「カタログ型」は、製品カタログから、IoTやロボットなどの汎用製品を選択する方法でしたが、一般型ではカタログ以外の製品を選択して申請できるようになりました。
変更点③:対象事業者の拡大
従来は、従業員がいることが申請要件になっていましたが、個人事業主や小規模事業者など、正規雇用者や従業員がいない事業者も申請可能になる予定です。
変更点④:補助対象の拡大
DXに関連するソフトウェアとハードウェアの組み合わせやシステム構築、そして、既存設備の置き換えも補助対象となりました。同時に補助対象経費も拡大され、リース料やクラウド利用料も対象になります。
変更点⑤:補助上限額の引き上げ
前述の通り、賃上げの取り組みによって、補助率が1/2から2/3に引き上げられました。
大幅な賃上げ特例を適用される場合は、さらに補助上限額が引き上げられます。たとえば、給与支給総額の年平均成長率が6.0%以上増加する場合や、事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準である場合などです。
変更点⑥:申請方法の変更
応募や交付申請がGビズIDから随時受付されるようになりました。但し、前述の通り、GビズIDのプライムアカウントが必須となりますのでご注意ください。また、複数回の応募・交付申請が可能になりましたので、不採択だった場合でも申請内容を見直して再挑戦できます。
変更点⑦:事業実施後の効果報告の簡素化
補助金の交付を受けた事業者は、事業実施後に労働生産性、賃金等に関する効果報告を行う義務があります。事務局が定める期限までに効果報告が提出されなかった場合は交付決定が取消され、交付金の返還を求められます。この効果報告の回数が5回から3回に削減されました。
変更点⑧:保険加入の必須化
事業計画期間終了までの間に、補助金で導入する機器や設備が火災や自然災害(風水害を含む)で損失して、補助事業を完遂できなかった場合には、交付取消となる可能性があります。こうしたリスクに備えるため、補助金額が500万円を超える場合は、補助率(1/2)以上に相当する保険または共済への加入が必須となりました。補助額が500万円未満の場合にも保険加入が強く推奨されています。尚、保険加入に関する費用は補助対象外となっています。
<ここまでのポイント>
・一般型では自社にマッチした製品を選択でき、カスタマイズも可能。
・複数回の応募や交付申請ができるようになった。
中小企業省力化投資補助金の補助対象となる製品の要件
改正前の中小企業省力化投資補助金の対象となるのは、カタログに事前登録された製品のみでしたが、一定の条件や制限を満たす製品を任意で選択できる「一般型」が新設されました。以下の要件を満たした製品が補助対象となります。
①省力化や生産性向上の効果がある
省力化や生産性向上の効果がある設備やシステムであることが前提になります。
②事業計画に適合している
申請時に提出する事業計画の内容と適合し、経営改善に役立つことを証明する必要があります。
③最新技術やシステムを含んでいる
主にDXに関連する設備やシステムの導入が対象となります。従来の設備などの置き換えも対象になりますが、旧式技術の補助は対象になりづらいです。
④補助対象経費に該当する
機械設備、ITシステム、ソフトウェア、クラウドサービスなどの購入費用及び使用料、設置工事費用、保守費用などが、前項記載の補助対象経費に該当すると認められる必要があります。
<ここまでのポイント>
・補助事業で導入する製品は任意に選択できるが、一定の条件や制限を満たす必要がある。
・事業計画に基づいて省力化や生産性向上の効果があり、最新技術やシステムを含むこと。
自社の課題解決によりそった省力化投資が可能に!
中小企業省力化投資補助金は多様な省力化投資を支援する狙いで、補助対象や経費の幅が広がり、かなり活用しやすくなりました。個別の事業や経営課題にあわせた設備やシステムのカスタマイズまで補助されます。
一次公募分の締切りは3月末とかなり慌ただしいスケジュールのため、申請できる事業者は少ないことが予想されます。それでも一定数は採択されるはずですので、すでにデジタル化やIT投資の計画を進めている会社は、思い切って挑戦してみるとよさそうです。
尚、中小企業省力化投資補助金は令和8年度まで継続して実施することが公表されています。今後、公募回数の増加や通年での実施など、中小企業向けの補助事業として定着することが期待されます。今回の公募に間に合わなくても、次回以降のチャンスはあります。ぜひ活用を検討してみましょう!